園城寺(三井寺)別所の坊に江戸時代初期に作庭された庭園では、現在はライブイベントも開催。滋賀県指定名勝。
ながらの座・座(旧正蔵坊)について
【通常非公開/不定期でイベントが開催】
「旧正蔵坊庭園」(きゅうしょうぞうぼうていえん)は2018年に滋賀県指定名勝に選定された庭園。園城寺(三井寺)五別所の一つ『微妙寺』の坊舎だった「正蔵坊」の庭園として、江戸時代初期に作庭されたと推定されています。
この庭園を知ったきっかけは文化遺産オンラインの地図。三井寺の南に史跡・名勝のアイコンが表示されていて「ここなんだろう」とクリックしてみたらこの庭園だった。
但し最初気づいた時には、「旧正蔵坊庭園」で検索しても他に情報が出てこないしGoogleマップにもそんな表示はないし…一体なんだろうと。
後日改めて調べたら、
・現在は一般の住宅になっている(橋本家住宅・国登録有形文化財)
・一般の住宅でありつつも、その古建築・古庭園を活用した『ながらの座・座』というスペースとして、文化芸術イベントを行っている
ということがわかり。2011年にこの古庭園を保存と活用を通じて後世に残すために設立された「元・正蔵坊と古庭園を楽しみ守る会」によって様々なイベントが運営されています。特に“古庭園ライブ”では日本センチュリー交響楽団協力によるライブが開催されるなどかなり精力的!
ぜひイベントがある時に訪れたいなあと思っていたのですが、8月に《年に一度のオープンハウス》というのがあったので訪れました。京都の人気書店・ホホホ座さんの出店も。
国登録有形文化財の主屋は江戸時代初期、1644年頃の建造。戦前には一般住宅となりその後一部は昭和年代に改修されたものの「一の間」(書院)は当初からのまま残り、園城寺別所の坊の希少な遺構とされます。その広間が現在ではイベント・展示スペースとして活用。
その書院から眺められる池泉鑑賞式庭園は建物と同時期(江戸時代初期)の作庭とされる長等山の斜面を活かした池泉庭園で、その特徴は細長い中島と奥の枯滝石組。中島は演奏のステージとして用いられていることも。その庭園を斜面からのモミジが頭上を覆います。
ちなみに先日紹介した『等正寺庭園』さんからは徒歩2分ほどの近さ。作庭年代は異なるにせよ、この狭い範囲に2つ似たような規模の(寺院ルーツの)池泉庭園があるということはとても興味深いし、長等公園近隣には他にも歴史がありそうな家屋があったりする。この地域の歴史的な背景も興味深い。
あと現在も住まれている個人の住宅の庭園が県指定名勝という点について。京都・滋賀だと他にも『杉本家庭園』とか『大角氏庭園』とか国指定名勝もあるけれど、全国的に見れば稀有な例。
その上で”ただ見る”だけでなく、様々なイベントを通じて古庭園を新たな体験の場としているのはとても素晴らしい。応援したいしまた訪れたい!
(2020年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR東海道本線 大津駅より徒歩15分強(駅にレンタサイクルあり)
京阪京津線 上栄町駅より徒歩9分
京阪石山坂本線 三井寺駅より徒歩10分
〒520-0035 滋賀県大津市小関町3-10 MAP