妙福寺庭園

Myofuku-ji Temple Garden, Fukuoka

一年間で8時間だけ拝観のチャンスがある“雪の庭”。江戸時代初期以前に作庭された庭園。福岡市指定名勝。

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妙福寺庭園について

【通常非公開】
「妙福寺庭園」(みょうふくじていえん)は福岡市指定名勝の庭園で、作庭年代は記録がないそうですが調査上の推定では江戸時代初期を下らない(寺伝では室町時代の作庭と伝わる)古庭園で、公開日は『1・5・8・12月を除く毎月1日の13時〜14時の1時間』のみ。特徴はなんと言ってもこの白い庭園の姿!2020年3月に初めて拝観しました。

2020年も『推しのサッカークラブのアウェー遠征に引っ付けて、庭園を観に行く』スタイルは変わりません。このレアな庭園の存在は一昨年ぐらいから認識はしていたけど――なかなかこの日程条件に福岡に来るのって難しい。まして年末年始は空いていないわけだし。
そして。2020年のアウェー開幕戦が福岡。しかも3月1日。願ったりかなったり…!!!

…しかしご存知の通りコロナウイルスの影響でJリーグも中断。旅の目的がなくなった――でも取った旅行社はキャンセル費がかかる――であるならば、この機会を逃したくない気持ちが勝ってしまいました。もともとインフルエンザが怖くて手洗いうがいマスクは欠かせない方なので――数日前に拝観休止にはならない旨をお電話でお聞きし、福岡へ行ってきました。

寺号は地福山。浄土真宗西本願寺派の寺院で、本堂前には親鸞聖人の銅像も立ちます。戦国時代の織田信長による石山合戦の際にはこの地から加勢したそうで、当時与えられたという扁額や当時の薙刀が寺宝として残るそう(非公開)。現在の本堂は明治時代末期〜大正年代に建てられたものですが、2005年の福岡県西方沖地震で大きなダメージを受け2009年に修復。

そして庭園です。なんでこんなに白いの??
・正体は川砂(白砂)
・この庭園は元々、自然の河川を利用した庭園だった。眼下に見る小川はかつてはもっと流量があった(それこそ昭和年代までは。現在は近隣の団地開発により流量が減った)
・昔から川の上流から白砂がどんどん流れ着いていて、その堆積したものを逃すために造られたのが前方の築山。
・築山も砂でできているから、足を踏み入れると膝とかまで埋まってしまう場所がある(うっかり歩けない)
・この昭和〜平成年代だけでも砂の堆積が進んでいて、対岸の護岸ももっと見えていたし手前の赤い石も実はもっと高さがある。
・そんな具合に白砂による築山だからハシゴを置くことができず、木の剪定がままならないのが悩み…最近は伸びっぱなし。結果的に団地を隠す効果を生んでいるけれど、昔は借景として山が見えたらしい

などなど。自然に堆積した白砂による庭園の造形物…と言えば京都『銀閣寺庭園』の向月台ですが、こんな築山を白砂で作っちゃった、みたいな庭園は初めて見た!

そしてこの庭園は――ご説明では「枯山水」というワードが出てきたけど、なんだろう?白砂がこれだけ敷かれた庭園だと枯山水庭園のイメージに引っ張られるけど、元々は自然の川が流れていたと思うと池泉庭園とも言えない。
そして建物(書院)からこんな風に見下ろす庭園も珍しい。寺社仏閣系だと滋賀の『多賀大社庭園』(桃山時代・国指定名勝)とかですかね。江戸時代には福岡藩主・黒田公もこの高さにあった書院からこの庭園を眺めていたそう。

写真で見直すより大きな庭園、その石組も特徴的。左手側の築山の上にある青い石はお釈迦さまを表し、庭園中央のくぼんでいる石は船石で、鎌倉時代に流罪となった法然、親鸞を乗せた船を表しているそう。
…それ以外の石についても色々と言われがあったそうですが、先代のご住職がそれを書き残さずに亡くなられてしまい、寺伝にも残っておらず今となってはわからないと。中央の大きな白い石もめちゃめちゃ意味ありそうだしなあ…(その白い石の向こうにも窪んだ岩があるのです)

そしてなぜ公開時間をこれだけ限定しているのかという点では、元々観光寺院ではないので積極的な公開はしたくない。また昔マナーの悪い見学客が多い時期があり、対応に苦慮された…とのことで超限定的な公開になったそう。
…複雑な気持ち。本当に造形物として美しいので地元・福岡の若い芸術好きにも是非体験して欲しい、けどマナーが悪い休日カメラマンとかも実際居るわけじゃないですか…。寺院はあくまでご厚意で開かれている、ということを忘れてほしくないもの。

今回は白砂の上の落ち椿の姿が映えたけれど、6月の公開の頃には花を咲かしたサツキとこの白い庭園の組合せが見られるそう。なかなかそうタイミングよく来られないと思うけど、またいつか再訪したい。あ、あとこの集落はこの寺院だけでなくいくつかお寺があって――そうした点も歴史がある地区なんだなあって感じた。
結果的にその限定も心を揺さぶられる――言ったもん勝ちなので一言評しておくと、“幻の雪の庭”という言葉が思い浮かぶ。

(2020年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

福岡市地下鉄七隈線 野芥駅より約2.5km(徒歩30分・近くにシェアサイクルあり)
野芥駅・天神駅などより路線バス「重留」バス停下車 徒歩4分

〒811-1101 福岡県福岡市早良区重留5-8-10 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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