皆美館庭園(庭園茶寮みな美)

Minamikan Garden, Matsue, Shimane

海外の日本庭園専門誌ランキングで2年連続3位の人気庭園は、島崎藤村や小泉八雲ら数多の文人墨客が訪れた明治時代創業の旅館の枯山水庭園。松平不昧好みの鯛めし御膳も◎

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皆美館・庭園茶寮みな美について

「皆美館」(みなみかん)は島根県松江市の国宝『松江城』城下で明治時代から続く老舗旅館。宍道湖を借景とする枯山水庭園はアメリカの日本庭園専門誌のランキング『しおさいプロジェクト』で例年上位、2018年~2019年にかけては3位にランクインするなど高い評価を得ています。
※その庭園は、旅館内のお食事処『庭園茶寮』の利用でも鑑賞可。大名茶人としても有名な松江藩主・松平不昧公も好みんだと言う名物の「鯛めし御膳」がオススメ!

松江市の玄関口、JR松江駅から国宝・松江城へと至る道中、宍道湖~大橋川沿いに立地する皆美館。1888年(明治21年)に皆美家当主・皆美清太郎により料理旅館として創業。《客のこころになりて亭主せよ》という松江藩七代目藩主・松平不昧公の言葉を家訓に、現在まで130年以上の歴史をほこります。

近代~昭和時代にかけては島崎藤村志賀直哉小泉八雲高浜虚子河井寛次郎芥川龍之介武者小路実篤尾崎士郎北大路魯山人バーナード・リーチ棟方志功岡本太郎など多くの著名な文人墨客が訪れ、中でも島崎藤村の名は“藤村の間”として残っています。また昭和時代の俳人・山口誓子が宍道湖について詠んだ“鴨群れて浮く これほどの 奢りなし”という句はのれんにも。(お庭には誓子の句碑もあります)

そんな名旅館は建物のエントランスから大きな(モダンな)手水鉢と苔むした空間が出迎えてくれます(ロビーエリアにはかっこいい滝石組の石庭も)。
主庭園はその奥、お食事処に面した宍道湖・大橋川側にあり、レストランフロアや旅館の客室から鑑賞できます(利用者は庭園に出て歩くこともできます)。

樹齢200~300年のマツを中心としたいわゆる“白砂青松”の枯山水庭園で、白砂の中に直線的な石畳や飛び石が配され、大橋川を向かって左側に位置する離れ/茶室「瓢庵」へと至る茶庭・露地も兼ねています。その作風は、松平不昧公以降の時代に松江・出雲地域ではぐくまれてきたいわゆる“出雲流庭園”。現代では川の向こうに現代的なビルも並びますが、これだけの大河を背景にした庭園は珍しい!(最も奥には中国山地も)

なお、参考記事『100年経営に極意あり!長寿企業の秘密 伝統を守りながら挑戦を続ける』(日商 Assist Biz)に明治時代の創業時の庭園の写真があります。明治時代の写真だと元は雲州平田の『康国寺庭園』のようなよりシンプルな印象で――その写真や過去の航空写真を何パターンか見比べると手水鉢や灯篭の位置が変わっていたり、石張~苔のエリアはこの10年程で改修されているようですが、昭和の戦前には現在の庭園の原型が出来ていた様子が伺えます。

先述通り、これだけ大きな川沿いの庭園というのは珍しく、近代から現代まで大きな水害から免れてきている事の現れとも言えます(川沿いという点では徳島・吉野川沿いの『本楽寺庭園』が思い浮かびますが、そちらは高台部にある。川の水面と近い…という点でも、印象が近いのは琵琶湖を借景とした『居初氏庭園』でしょうか)。

宿泊は1泊約2万円~という水準というのもあって、同じ日本庭園ランキングの常連『足立美術館』と比べるとまだ訪れている方は多くないかもしれませんが、鯛めし御膳も足立美術館の入館料と同水準。ぜひ『庭園茶寮みな美』もチェックしてみて。なお2室限定の“美文”という客室でしか見られない庭園があるようなので、予算ある大人の方はぜひご宿泊を!
※また皆美館と同じ系列(別館)の玉造温泉『佳翠苑皆美』の庭園も“しおさいプロジェクト”では高評価。後日紹介予定。

(2020年11月、2025年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR山陰本線 松江駅より徒歩15分強
一畑電車北松江線 松江しんじ湖温泉駅より徒歩14分
松江駅より路線バス「大橋北詰」バス停下車 徒歩2分

〒690-0843 島根県松江市末次本町14 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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