松浦史料博物館(旧松浦詮邸)庭園

Matsura Historical Museum Garden, Hirado, Nagasaki

最後の平戸藩主・松浦詮が明治時代に築いた別邸に開かれた歴史博物館。平戸城を望むお庭に、国登録有形文化財の茶室“閑雲亭”で茶道鎮信流の喫茶も。

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松浦史料博物館(旧松浦詮邸)庭園について

「松浦史料博物館」(まつうらしりょうはくぶつかん)は平戸藩主・松浦氏のお屋敷に開かれた歴史博物館。その建築は最後の平戸藩主・松浦詮が伯爵となった明治時代に建てられた『鶴ヶ峯邸』が活用されており、本館が長崎県指定有形文化財となっているほか、蔵や茶室『閑雲亭』などが国登録有形文化財となっています。

キリスト教の伝来/南蛮貿易など、日本の歴史においても欠かせない港町・平戸。江戸時代に平戸藩を治めた松浦氏は古くは平安時代末期の源平合戦の壇ノ浦の戦いや鎌倉時代の元寇にも参戦し水軍・松浦党として名を馳せました。

以来、江戸時代初めに鎖国となるまでは日本における主要な国際貿易港でもあった平戸。そんな平戸を治めた松浦氏の800年以上の歴史の中で伝わった歴史的アイテムが一堂に会するミュージアムがこちら。居城だった『平戸城』から約1km、平戸城天守と港をのぞむ高台に築かれた、かつて別邸だった場所に建ちます(そこに至るまでの石段と石垣は、こちらもまるで城郭のよう)。

その本館は1893年(明治26年)に最後の平戸藩主・松浦詮伯爵のお屋敷として建てられたもの。この本館『千歳閣』に附属する茶室『閑雲亭』と待合、また非公開ですが隣接する松浦家の現在の私邸「松浦家住宅」と蔵「仙禽庫」「金剛庫」が国登録有形文化財。
千歳閣の前に広がるのは「平戸城と港を眺めるためのお庭」とも言いたげなシンプルな芝庭。そして裏手には“心字池”を配した池泉庭園があります。

千歳閣から飛び石を伝った先にあるのが茶室『閑雲亭』。松浦詮が千歳閣と同時に建立した、大きな茅葺屋根が特徴的な草庵茶室。
江戸時代初めに最初の平戸藩主・松浦鎮信はその時代の他の大名と同じく茶道をたしなみ、大名茶人・片桐石州に学び自ら「茶道鎮信流」(石州流鎮信派)を興しました。その鎮信流に沿ったこの茶室は建具を開け放ってお庭~平戸城の眺望を楽しむための開放的な作りがその特徴。週1~2日(不定期)で、このお茶室で鎮信流で点てられたお茶をいただくこともできるそう。

ここでは建物と庭園を中心に紹介しましたが、3万点にも及ぶ収蔵品からよりすぐった展示品は歴史好きにはきっとたまらないはず…!文化財として価値の高いものは、大友宗麟が松浦鎮信に贈ったと伝わる戦国時代の鎧『紺糸威肩白赤胴丸』が国指定重要文化財。また非文化財の中でも、狩野探幽筆の『狂獅子図屏風』、伊能忠敬が測量した平戸の地図、戦国時代の海外の古文書など…。

そして9代藩主・松浦静山を筆頭に文芸にも長けた松浦家、いわゆる「歴史的史料」も見応えあるけれど、茶道具や遊具の展示も多く、幅広く歴史が感じられます。平戸藩の培った兵学/蘭学は他藩の吉田松陰高野長英らにも影響を与えました。

またこの松浦史料博物館の築かれている石垣の麓には樹齢数百年と言われる天然記念物級の大ソテツの姿も。お庭・植物好きな方は合わせてチェックしてみて。

(2024年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

松浦鉄道 たびら平戸口駅から約5km(駅にレンタサイクルあり)
たびら平戸口/佐世保市内から路線バス「平戸桟橋」バス停下車 徒歩5分

〒859-5152 長崎県平戸市鏡川町12 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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