万葉公園茶室“万葉亭”

Manyo Park Tearoom “Manyo-tei”, Yugawara, Kanagawa

古くは万葉集にも詠まれた湯河原温泉に、佐佐木信綱と堀口捨己が建築した茶室。湯河原の新たな顔“湯河原惣湯”も。

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万葉公園 茶室“万葉亭”/湯河原惣湯について

「万葉公園」(まんようこうえん)は温泉街・湯河原の中心部、駅からは約3kmの位置にある都市公園(町立公園)。公園入口にある茶室“万葉亭”は建築家・堀口捨己の設計で、氏の現存する数少ない建築の一つ。日本の歴史公園100選。

2021年夏、約10年ぶりに湯河原へ。そしてこの公園は初めて訪れました。
(´-`).。oO(この日の午前中に訪れた『江之浦測候所』の後、交通事情で湯河原~根府川から抜け出せなくなるアクシデントがあり…)せっかくなので、訪れたいと思っていたこちらへ。

元々この地は、現在も公園内にある『熊野神社』の境内地でした。湯河原・熊野神社は江戸時代、1672年(寛文12年)の史料に“湯権現”と記され、それ以前には創建していた由緒ある神社。
近代になり、その隣に出版業や陶磁器メーカー“大倉陶園”を設立し財を成した実業家・大倉孫兵衛の別荘が建立。日露戦争には戦傷病者の保養地『養生園』(その後『大倉公園』)となり、東郷平八郎らも訪れたそう。日本の歴史公園100選に選定されたのはこの辺の歴史があるからかな。

戦後の1951年(昭和26年)に文学者・佐佐木信綱の提案で『万葉公園』へと改名。湯河原温泉が古くは『万葉集』にも詠まれていることにちなんで、現在は万葉集ゆかりの草木約80種類が植えられたり、公園の脇を流れる落合川の渓流を楽しむことができます――訪れた日は大雨の後だったのでド迫力の水の流れだったけど…。

小高い丘に建立された茅葺き屋根の茶室『万葉亭』もその一環で1955年(昭和30年)に建立されたもの。そのデザインは万葉集に収められている《はだすすき 尾花逆葺き 黒木もち 造れる室は 万代までに》の趣を再現したもの。農村の長屋門のような待合が独特。
10時~15時の間は中で抹茶をいただくこともできます(月・水休み)…が残念ながらちょうど15時過ぎた所だった…!泣

で、2021年に新たに公園入口にオープンしたのが『湯河原惣湯(Books and Retreat)』。現代的な建築の1階はカフェと観光案内所、2階にはなんとコワーキングスペースが!
このカフェとコワーキングスペース、本のセレクトがなかなかに良くて。旅行本はもちろんなんだけど、建築家やデザイン関連の本、特に自分が大好きな吉田五十八の本が2冊あってまったりと滞在させていただきました。

なお公園奥には2021年の公園リニューアルに際して同じく新たにオープンした日帰り温泉“惣湯テラス”(旧・独歩の湯)も。その他、国木田独歩の碑や、公園入口には画家・竹内栖鳳の筆による“万葉の歌碑”も。湯河原観光の際にはぜひ立ち寄ってみて。

(2021年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR東海道線 湯河原駅より路線バス「落合橋」バス停下車 徒歩1分
湯河原駅より約3km(徒歩40分)

〒259-0314 神奈川県足柄下郡湯河原町宮上566 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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