源頼朝が建立した古刹に京都の名園を手掛ける曽根三郎が作庭した枯山水庭園。頼朝手植えのサツキも。
満昌寺庭園について
【通常非公開・例年11月3日に特別公開】
「満昌寺」(まんしょうじ)は平安期まで相模国で影響力を持っていた三浦一族の武将・三浦義明を開基として源頼朝により建立された寺院。本堂前には頼朝お手植えのサツキツツジがあり、国指定重要文化財の「三浦義明坐像」を始めとする多くの文化財を所蔵するほか、京都で名園を手掛けている曽根三郎作庭による枯山水庭園があります。
文化財や庭園は近年11月3日(文化の日)だけ特別公開が行われていますが、今回特別に庭園を拝観させていただきました!ちなみに初公開が2014年なのでまだ殆ど一般には公開されていない、貴重な姿をお届け…!親切にご案内いただきありがとうございましたm(_ _)m
まずは寺院について。海の街というイメージが強い横須賀ですが、満昌寺は横須賀の内陸部、衣笠駅から約2km程の場所にあります。
近くにある「衣笠城跡」は平安時代に相模国で影響力を持っていた三浦氏の居城。三浦氏の4代目・三浦義明は源頼朝が平家を打倒するため旗揚げした際にそれを支えたものの、頼朝軍が敗れ房総半島に逃れた後にこの衣笠城での平家方との戦いに敗れ戦死。
「満昌寺」は頼朝が義明を弔うために鎌倉時代初め、1194年に創建されました(頼朝お手植えのつつじもその際に植えられたものとのこと)。元は山号を「雲龍山」と名乗ったそうですが現在は「義明山満昌寺」と名乗っています。(なお鎌倉幕府や頼朝を支えた和田義盛や三浦義村は義明の孫にあたる)
建物の裏にある通常非公開の枯山水庭園「蓬莱庭」は、京都の名園『天龍寺』や『東福寺』の庭園を管理、また『天龍寺』の前庭や『真如堂』の枯山水庭園の作庭を手掛けている曽根三郎(曽根造園)による作庭。裏山を借景とし、なかなか東京近郊ではお目にかかれない京風の庭園、禅の枯山水の世界!
京都が拠点の曽根三郎がこの庭園を手掛けることになったきっかけは、先代のご住職が宗派(臨済宗)が同じ天龍寺と繋がりが深かったことにあるそう。(ちなみに満昌寺は鎌倉建長寺派の寺院ですが、建長寺も臨済宗です)
曽根三郎にとっては満昌寺庭園が関東での最初の作庭となり、その後鎌倉の『浄妙寺庭園』やあじさい寺『明月院庭園』、『長寿寺庭園』を手掛けることになりました。
「蓬莱庭」も素晴らしいのですが、寺務所前のアプローチの石庭や茶室「如是庵」「竹静庵」へのアプローチも曽根造園が手掛けたもの、更に山門の横にある枝垂れ桜(残念ながら桜は散った直後だった…)は京都の国名勝『円山公園』の有名な「祇園枝垂桜」を母樹として育っていた枝垂れ桜を、京都から神奈川まで移植したものだそう。
また茶室前にある苔庭「素心庭」が最も近年、曽根造園さんの若手が作庭したものとのこと。配された石のデザイン意図がとっても気になる。
なお年に一度の特別公開時もメインは庭園ではなく、横須賀で一番の数を所蔵しているという文化財。鎌倉時代に造られ国指定重要文化財となっている「三浦義明坐像」をはじめ、横須賀市指定文化財の華厳釈迦像、天岸慧広坐像、襖絵などが所蔵されており、襖絵は幕末〜明治時代にかけての狩野派の絵師であった斎藤海信(永伯)、斎藤遊外の作とされます。今回は庭園の拝観のみで宝物殿などは見学していないので…また秋の公開時に訪れてみたいな!
(2019年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR横須賀線 衣笠駅より2.5km(徒歩約30分)
「衣笠十字路」バス停(衣笠駅から徒歩5分)より路線バス「満昌寺」バス停下車すぐ(また一つ前の「衣笠城址」バス停はバスの本数多し。徒歩5分程)
〒238-0024 神奈川県横須賀市大矢部1丁目5-10 MAP