旧安田楠雄邸庭園

Kyu-Yasuda Kusuo House Garden, Bunkyo-ku, Tokyo

大正時代に“としまえん”創業者が造営、後に安田財閥・安田善四郎が所有したお屋敷は東京の穴場庭園&近代和風建築!東京都指定名勝。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

旧安田楠雄氏庭園について

【水曜日/土曜日のみ公開】
「旧安田楠雄邸庭園」(きゅうやすだくすおていていえん)は『としまえん(豊島園)』創業者の自邸として大正時代に造営されたお屋敷。後に“安田財閥安田善四郎の所有にもなった近代和風住宅を含め、庭園が東京都指定名勝の文化財庭園となっています。

先に紹介した『須藤公園』と国登録有形文化財『旧島薗家住宅』から徒歩2〜3分。その両者を訪れた5月には立ち寄らなかったんだけど、2022年7月の予定がぽっかり空いた水曜日に4年半ぶりに訪れました!この4年半の間には耐震補強のため1年強の公開休止期間も。

かつて学者/実業家/銀行家/文化人が多く住んだ千駄木の高台部。現在も割と大きな邸宅が立ち並びお屋敷街の面影を残しますが、その中で戦前・関東大震災以前から残る貴重な邸宅が旧安田楠雄邸。

その歴史は1919年(大正8年)、兵庫県出身の実業家・藤田好三郎の邸宅と庭園が造営されました。しかしそのつい3〜4年後の1923年(大正12年)の関東大震災の直後に“安田財閥”の創始者・安田善次郎の女婿・安田善四郎へと売却。

施設名にもなっている安田楠雄氏はその長男で、平成年代まで安田家の現役のお住まい・生活の場として利用され続けましたが、楠雄さんが1995年に他界されたことを機に、ご夫人により建築と庭園が公益財団法人日本ナショナルトラスト(JNT)に寄贈。公開がはじまり現在に至ります。

「旧安田楠雄邸庭園」という施設名だけれど、どちらかと言えばこの施設のメインは建築。
ときどき《施設名に“庭園”となくても古いお屋敷には良い庭園が残りがち》とか《建築は重要文化財だけど庭園は未指定、でも土地が重要文化財だから実質庭園も重文級》とか書いたりするけど(代官山の『旧朝倉家住宅』など)、逆に旧安田邸は《建築含めて敷地全体を“庭園”として文化財指定してる》ってパターン。

敷地面積約1,500平方メートルの大部分を占めるのがその近代和風建築。玄関を入って手前に洋風のインテリア&赤い絨毯と庭園の紅葉の組合せに惹かれる応接室とサンルーム。渡り廊下を通って奥に“残月の間”“茶の間”などお茶を意識させる和風空間…という近代の実業家らしい和洋折衷のお屋敷。またその数寄屋空間は2階の客間でも味わうことができます。(2階からは庭園の枝垂れ桜が目の前に!)

庭園は前庭、お屋敷に沿って作庭された主庭と中庭・坪庭、計4つの庭で構成。そのうち主庭は数寄屋造り建築と一体化した茶庭風の雰囲気を持つ枯池の庭園。奥の“茶の間”から正面に枯滝石組が眺められるようになっているけど、ここがお決まりのビューポイントというよりは様々な部屋からの眺めを楽しめる庭園。

なおこの主庭、通常は建物内からの鑑賞のみで降りて歩くことは不可。ですが、不定期で?『庭園に降りて歩くことができる』イベントも。2017年11月に初めて訪れた時はちょうどそのイベント時だった(ので後半の写真はその際のもの)。
邸宅/庭園内には防空壕も隠されており、こちらも年2回公開イベントがあります。ちなみに訪れた7月には「台所」の特別公開が実施されていました。

初めて訪れた2017年当時はまだあまり近代和風建築に今ほど目がいってなくて、「建築よりも広い池の庭園」を中心に見ていたので…そんなにピンと来なかったんだけど。この4年、各地の近代和風建築をインプットしてからの今回の再訪はまるで違ったというか、「最高じゃん旧安田楠雄邸…!」って感じだった。
前回の11月と違って7月の平日は他の来場者も殆ど居なくて、でも心地良い風が吹き込むお座敷で青もみじ揺れるお庭をまったりと眺められて…。ボランティアガイドの方も「贅沢でしょう」と仰られていた。

2020〜2021年度の事業報告を見ると旧安田邸の1日の平均来場者は30名ほど。と言っても紅葉の繁忙期は大きく上振れしているだろうから非繁忙期の平日なら10〜15人くらいかな。この来場者数で良いかはさておき、この大東京の中でとっっっても贅沢な穴場空間には違いない…。
東京は大名庭園ルーツの池泉回遊式庭園は沢山あるけど、こういう戦前の和風建築って少ないから、そうした意味でも稀有な場。まだの方、ぜひ紅葉の繁忙期の前にも訪れてみて。

(2017年11月、2022年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

東京メトロ千代田線 千駄木駅より徒歩5分
JR山手線 西日暮里駅・日暮里駅/東京メトロ南北線 本駒込駅より徒歩13分

〒113-0022 東京都文京区千駄木5丁目20-18 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
PICK UP - TOUR / EVENT
MEDIA / COLUMN
最新の庭園情報は約10万人がフォローする
【おにわさん】のSNSから。