旧秀隣寺庭園(興聖寺)

Kyu-Shurin-ji Temple Garden (Kosho-ji), Takashima, Shiga

管領・細川高国が室町幕府将軍・足利義晴に贈った、高台からの借景も美しい池泉鑑賞式庭園。国指定名勝。

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旧秀隣寺庭園(興聖寺)について

「旧秀隣寺庭園」(きゅうしゅうりじていえん)は二十五霊場14番の『興聖寺』の境内に残る庭園で、。室町時代に管領・細川高国により作庭されたものと伝わります。
滋賀県内に30箇所ある国指定名勝庭園の中では最も鉄道駅から離れている庭園…ということで、(非公開のものを除いて)滋賀県の国名勝庭園の大トリを飾る形で初訪問!

まず『興聖寺』(こうしょうじ)について。鎌倉時代の1243年、宋から帰国した曹洞宗の開祖・道元禅師がこの朽木の地域を訪れた際に、当地の地形や風景が京都・宇治の興聖寺(京都府指定名勝で以前訪れました。伏見深草の興聖寺という説も?)に似ておりそれに感激したことから、領主であった近江守護・佐々木信綱(朽木信綱)に創建を勧め、そして同じ名で建立されました。明治維新まで当地を治めた武将・朽木氏の菩提寺。
なお創建当時は現在地ではなく安曇川の対岸にあったそうです。「上柏村指月谷」というのがどこかはっきりしないけど、対岸にある「若宮八幡」「柏辨財天社」「山神社」の住所は朽木柏。

時は流れて室町時代後期(戦国時代)。当時実権を握っていた管領・が擁立した室町幕府12代目将軍・足利義晴は、高国が細川晴元・三好元長との「桂川原の戦い」に敗れたのを機に京を追われ、朽木稙綱を頼ってこの朽木の里に逃れました。
現在興聖寺のある場所はその際に建立された『岩神館』があった場所で、「旧秀隣寺庭園」はその館を建立する際に細川高国が義晴に贈ったものとされます。そのため別名「足利庭園」とも。細川高国の作庭と伝わる庭園には他にも三重の『北畠氏館跡庭園』があります。細川家ゆかりのスポットとして細川護煕元首相が訪れた際の写真も堂内にあったのですが、東京・京都・熊本と各地に細川家ゆかりの名園があるのはこの細川高国が始まりにあるのかな…。

その建立には朽木氏のみならず、京極高秀、浅井亮政、朝倉孝景らに協力を仰いだそうですが――時代、ロケーション含めて一乗谷朝倉氏庭園の『湯殿跡庭園』あたりと雰囲気がよく似ている。
足利義晴および後の13代将軍・足利義輝は岩神館に3年間滞在したそう。その後江戸時代の初めに朽木宣綱が岩神館があった場所に「秀隣寺」を建立。この秀隣寺も別の場所に移転し(「朽木陣屋跡」の近くに「萬松山 秀隣寺」というが現在もあります)、替わって江戸時代の中頃に興聖寺が移転して今に至ります。その庭園の歴史を考えると、滋賀県観光サイトにある『この庭園は、正しくは「岩神館庭園」と呼ぶべきかもしれません。』の一文は確かにその通りかもしれない。

庭園の歴史ばかり書いてきたけれど、各地の武将が足利将軍に贈った『一乗谷朝倉氏庭園』や『松尾神社庭園』のような力強い石組はやはり共通して見られ、その上で高台にあるロケーションから山々(蛇谷ヶ峰)や安曇川の借景が美しい!池も枯れているように見えて、今回訪れた時期でも築山の方からコンコンときれいな水が流れ、曲水を通じて低地部の方に流れ落ちていました。

関西花の寺に数えられるのは庭園の前にある大きなヤブツバキで、樹齢は約500年。この庭園が作庭されたほぼ同時期に植えられたもので、現在でも春には多くの花を付け、そして庭園周辺にその花を落とすそう(その姿がまた美しいのだとか!見たいなー)。その他、本尊の釈迦如来坐像は平安時代に伝教大師によって作られたものとされ、国指定重要文化財となっています。

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冒頭に書いた通り、滋賀県の国名勝庭園の中では最も鉄道駅から遠い。滋賀県内の庭園は鉄道駅から近い場所がけっこう多いのでその中では最も行きづらい場所…なのですが、庭園から徒歩10分の場所にある「朽木学校」バス停と湖西線・安曇川駅間の路線バスは1時間半に1本程度はあるので十分公共交通機関で行ける場所ではあります。
ただ今回は京都・大原へ初めて行こうと計画していて――地図見てたらそのままずっと同じ道(鯖街道こと国道367号線)を行けばこの庭園へ辿り着くことがわかったので、レンタルしたスクーターで行きました!

なお正確に言うと「滋賀県の国名勝庭園の中では最も鉄道駅から遠い」のは、この「旧秀隣寺庭園」から約5km離れた場所にある『朽木池の沢庭園』。この庭園も後日紹介はしますが――元々「だいぶ荒廃してる」とは見聞きしてて。実際今回訪れたら草原という感じだったので…頑張って合わせて2箇所とも見に行く必要はないかな…無いけど最寄バス停があることは確認したし、朽木あたりでレンタサイクルできたらいいのにな、と思う距離感ではある(笑)

(2019年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR湖西線 安曇川駅より路線バス「岩瀬」バス停下車 徒歩約3分、「朽木学校前」バス停下車 徒歩10分
※土休日のみ1日1便のみ京都・出町柳駅から「岩橋」バス停までの路線バスあり
※下記の地図は比較的本数多い「朽木学校前」からのルート

〒520-1421 滋賀県高島市朽木岩瀬374 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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