“加賀百万石”加賀藩主・前田侯爵家の本邸だった近代の洋館と日本建築は国指定重要文化財…和館から眺める庭園は原煕の作庭。
旧前田家本邸/駒場公園について
「旧前田家本邸」(きゅうまえだけほんてい)は“加賀百万石”旧加賀藩主前田家16代当主・前田利為侯爵の邸宅として昭和初期に造営された近代建築。洋館・和館とも国指定重要文化財。現在は目黒区立駒場公園の一部として一般公開されています。
※なお、写真6枚目の和館の2階はガイドツアー時のみ公開で、7〜10枚目の庭園からの写真は2017年秋の『東京文化財ウィーク』の公開イベントで歩いた際のもの。通常公開時には庭園を歩くことはできません。
元は江戸時代の屋敷地でもあった現在の東京大学本郷キャンパス内に本邸を構えていた前田侯爵家。大正時代末期、敷地の拡張をめざした東京大学(東京帝国大学)と前田家で敷地の交換が行われ、前田家は東大農学部の実習地だったこの地に新たな本邸を造営しました。(なのでこちらも東京大学駒場キャンパスとほぼ隣接)
なお、本郷キャンパス内に残る当時の前田家本邸の遺構が国指定文化財の庭園『懐徳館庭園』。
その後は前田利為翁は太平洋戦争で戦死、戦後はGHQに接収され連合国軍の司令官官邸などとして使用されました。その後東京都(現在は目黒区)の公園として昭和中期に「駒場公園」が開園。
先述の『懐徳館』(旧前田家本郷邸)の方は太平洋戦争の空襲で焼失し、往時の建築は残されていませんが、こちらは戦災を免れ華族の邸宅を現代へと伝えます。洋館の設計は日本橋高島屋などを手掛けた高橋貞太郎、和館の設計は京都『平安神宮』などにも建築を残す佐々木岩次郎、そして裏千家の代表的茶室「又隠」の写しとされる茶室は木村清兵衛が手掛けました。
和館の方も凝った欄間や明治期を代表する日本画家・橋本雅邦の扉絵など素晴らしい意匠が多いのですが、追って見ることになった洋館がすごかった…。重厚な玄関からシャンデリア、赤い絨毯の映える大階段に様々な模様の内装…。ド広い豪邸でした。これ無料公開でいいんだろうか…目黒区はお金持ち多そうだからいいのか…(笑)
和館は洋館と比べるとこじんまりしていて、実際にこちらは生活の為ではなく外国からの賓客をもてなすための建物だったそう。庭園側から見ると京都『銀閣寺』の庭園と似ている…と案内にあるのですが確かにそうかも。
この“中国趣味の庭”の作庭は『明治神宮』の森の造営にも携わった近代の造園家・原煕(はらひろし)によるもの。
なお和館の庭園にかつてあった煎茶室は現在、金沢の“日本三名園”『兼六園』に隣接する『成巽閣』に移築され、「成巽閣煎茶室三華亭」として石川県の文化財になっています。
この2棟の立派な邸宅のみならず、現在は芝生広場になっている洋館のバルコニー前の芝庭もかつては前田家の庭園で、現在『日本近代文学館』が建つあたりには温室や馬場があり、隣接する「前田育徳会」の洋風建造物(こちらも国の重文ですが非公開)も敷地内でした。どんだけの広さなのかと!(その他、洋館と和館を結ぶ渡り廊下も写真で見る限り素晴らしいのですが非公開。)
京王井の頭線沿線に15年以上暮らし、電車内からも視界に入る桜の名所『駒場野公園』は何度も足を運んでいたけど、この素晴らしい建築を知り足を運んだのは東京生活の終盤…。もっと早く気づけばよかった!そんな名建築と価値ある庭園。
(2017年11月、2018年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)