国登録有形文化財の近代建築に京都・いのはな夢創園/猪鼻一帆が作庭した現代庭園。期間限定で建築家・石上純也《木陰雲》も。
kudan house/九段ハウス(旧山口萬吉邸)庭園について
【通常非公開/展覧会などで公開も】
「kudan house」(九段ハウス)は東京・九段下の日本武道館や『靖国神社』の程近くにある近代建築。「旧山口萬吉邸」として主屋(洋館)と門・塀が国登録有形文化財。
2018年にリノベーションされ、現在は主に会員制ビジネス・サロンとして、その他には展覧会会場や期間限定のカフェ・レストランなど多目的に活用されています。東京2020オリンピック・パラリンピックにあわせて催された“パビリオン・トウキョウ2021”では庭園に建築家・石上純也による作品《木陰雲》が設えられました。
建築の歴史について。1927年(昭和2年)に実業家・山口萬吉の邸宅として完成。東京タワーの構造設計者・内藤多仲が構造設計、スパニッシュ風の意匠設計は木子七郎、今井健次が担当。東急電鉄、東邦レオ、竹中工務店の三社の共同事業となった2018年のリノベーションでは竹中工務店が設計を担当し、2020年の日本建築学会作品選集新人賞を受賞されています。
そして庭園は2018年にリニューアル。作庭を手掛けたのは京都・いのはな夢創園の猪鼻一帆さん、監修を担当したのがアメリカの代表的日本庭園『Portland Japanese Garden』のガーデン・キュレーター:内山貞文さん。イノベーションを生み出す場/イノベーティブがテーマで、現代風な中にも園路の細かな“あられこぼし”や庭石、手水鉢に日本庭園の伝統や技が込められている。
そんな庭園が2021年7月~9月の期間限定で『トウキョウ・パビリオン』の舞台となりました。
東京五輪へ向けて芸術・文化の側面から様々なイベントを行っていた『Tokyo Tokyo FESTIVAL』のほぼフィナーレを飾るイベントで、新国立競技場を中心とする複数の場所に有名建築家や現代芸術家による建物・オブジェが設置。この“自由で新しい都市のランドスケープを提案する世界初の試み”、藤森照信さんの『茶室 五庵』とともに最も行きたい場所だった…!
設置されたのは建築家・石上純也さんによる《木陰雲》。企画のテーマがランドスケープというのもあるけど、栃木・那須の『水庭』に次ぐ石上さんの庭園関連作品ということになる。
“夏の日差しを柔らかく遮る日除け”として造られたのは、庭園を覆うように設けられた黒い焼杉による造形物。自然風なんだけど、人の手を介さないとこの姿にはならないあくまで人為的な作品であり、庭石を礎石として用いたりと既存の庭園との一体化が意識されている。この日は雨模様だったので“庭に射す光”は味わえなかったけど、園内の庭石は光って別の美しさが。
飯田橋の駅から武道館方面へ歩いたことは一度や二度じゃないけど、この建物を見学できる日が来るとは思わなかったな…!ただトウキョウ・パビリオンでは庭園のみの見学だったので、次回は建物内のイベントにも参加したい。
(2021年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
東京メトロ東西線・半蔵門線 九段下駅 1番出口・7番出口より徒歩3分
JR中央・総武線 飯田橋駅より徒歩9分
〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目15-9 MAP