紅葉の湖東三山巡るなら、ここも。聖徳太子の創祀と伝わる神社に残る、近年修復が進行中の国指定名勝庭園。
胡宮神社社務所庭園について
【毎年11月23日前後に特別公開予定】
「胡宮神社」(このみやじんじゃ)は聖徳太子が開基とされる寺院『敏満寺』の鎮守社として古くから栄えた神社。境内に残る「胡宮神社社務所庭園」が国指定名勝となっています。
この庭園に初めて訪れた2015年頃は社務所の老朽化によって庭園拝観できない状態でした(庭園上段の庭門からかろうじて眺められた)。2020年11月、湖東三山巡りのついでに「どうなったのかなあ」と思って立ち寄ってみたら、社務所は修復されてきれいな茅葺屋根に。そして社務所内から庭園を拝観することができました!
なお今回は胡宮神社社務所を会場として2020年11月21日〜12月5日の間おこなわれていた、写真家・オザキマサキさんの写真展『佐藤初女』とともに庭園が拝観できた形。常時拝観可能なわけではないようです。(*その後、今後も「11月23日の連休前後に毎年公開予定」とメッセージをいただきました)
写真展は「多賀町立文化財センター」のスタッフさんが窓口だった。修復だけでなくイベント等での活用も文化財センターがされているということかな…。『YOBISHI』というプロジェクト名(→Instagram)で情報発信をされています。
胡宮神社の創建年代は不明だそうですが、社伝では飛鳥時代の敏達天皇の勅願により聖徳太子によって創祀されたと伝わるそう。鎌倉時代の頃に敏満寺は48伽藍120坊という規模をほこる天台宗の大寺院に発展。その鎮守社として、胡宮神社も『多賀大社』とも双璧をなす程に繁栄しますが、戦国時代に入り敏満寺は浅井長政や織田信長による焼き討ちに遭い廃寺に。
江戸時代の初め、1638年(寛永15年)に江戸幕府三代目将軍・徳川家光により胡宮神社のみが再建されました。その“寛永の大造営”で再建された本殿が滋賀県指定文化財。
そして現在は胡宮神社の社務所に残る庭園。元は『福寿院』という別当寺?の書院に江戸時代中期に作庭された庭園とされます。山の斜面を築山として利用した池泉鑑賞式庭園で…池の上に配された、大人ひとり座ればギリ入れるぐらいのサイズの小さな四阿“水月亭”が特徴。そのほかツツジ・サツキの刈込と中央に見られる石組、あと今回は紅葉が見事でした。
2015年〜2017年にかけて行われた修復事業。この庭園の“名勝庭園指定範囲”には社務所(建物)も含まれるため、まずは老朽化した社務所の修復から行われ、2015年の時の写真と比べて今回なくなっていた神饌所の再建や庭園そのものの整備は今後予定されているそう。その事業計画は15年計画!古い文化財を保存し続けるには物事を長いスパンで考えていく必要がある。
社務所内にあった整備事業のパネルには、1990年(平成2年)にも台風で大きな被害を受けたこと・かつては宮司さんが暮らしていたものの近年は無住となり、換気が行われなくなった結果等々で建物の老朽化が著しくなっていったこと・建物の建築年代は幕末と推定されていること等が明記されています。
ちなみに庭園以外にも、敏満寺の頃に奈良・東大寺の大勧進職・重源上人により送られた鎌倉時代の銅製五輪塔が国指定重要文化財、この山の中腹にある“石仏谷”が国指定史跡となっています。鎌倉の“やぐら群”みたいなものかな…。境内図も“敏満寺史跡保存会”によって新しくされていたり。街ぐるみで観光資源としての前向きな調査・保存・活用が進んでいる雰囲気が感じられます。また湖東三山訪れる時に一緒に立ち寄りたい。
(2014年12月、2015年3月、2020年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)