慶雲館庭園

Keiunkan Garden, Nagahama, Shiga

“長浜盆梅展”も人気!明治天皇・皇太后の行在所となった近代和風建築と、近代京都の名庭師・七代目小川治兵衛(植治)作庭の琵琶湖の借景が美しい国指定文化財庭園。

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慶雲館について

「慶雲館」(けいうんかん)は滋賀県長浜市に残る、明治天皇・皇太后の行在所(ご休憩所)となった近代和風建築。長浜の豪商/実業家・浅見又蔵が私財を投じて建設した迎賓館がそのルーツで、その庭園は近代京都の名作庭家・七代目小川治兵衛(植治)による作庭で国指定文化財(国指定名勝)となっています。氏の代表作の一つとも。

「黒壁スクエア」などレトロな町並みも人気の観光地・長浜。その玄関口・JR長浜駅から徒歩5分と駅近の国指定文化財庭園!これまで何度か訪れていますが、2025年に訪れた際の写真を追加して改めて紹介。

その歴史について。慶雲館の建立は1887年(明治20年)。この2階建て総檜造り寄棟造の純和風建築…は、前年の11月に明治天皇の長浜行幸が決まってから浅見又蔵が建設を決断。着工から3ヶ月後の行幸当日に竣工…という超特急で完成。棟梁は地元の宮大工・平山久左衛門(山久)。慶雲館の名は当時の内閣総理大臣・伊藤博文による命名。現在も2階には玉座が残り、犬養毅による書も展示されています。

その竣工〜行幸当時には庭園はなかったそうですが、明治天皇行幸から25周年を記念して1912年(明治45年)に現在まで残る回遊式庭園が竣工。現在も約6,000平米の敷地の大部分を庭園が占めます。
作庭を手がけたのは七代目小川治兵衛(植治)。又蔵の息子・二代目浅見又蔵が京都にてに作庭を依頼。なおその造園には治兵衛の息子(8代目)の小川白楊も深く関わったとされ、また近代の長浜で活躍した庭師、“植宇”布施宇吉も造園に参加した…と別施設の展示に記載が。

主座敷から眺める庭園が主庭ですが、豪壮なお庭は正門(表門)を入った所から始まる。表門〜中門までの空間が「前庭」。巨石や大きな石灯籠、そして自然石を組み合わせた「大灯籠」。この大灯籠の推定重要は20トン…!
その中門をくぐった先にも巨石による石碑が目に入る。この石碑は初代浅見又蔵を顕彰する「慶雲館碑」。またサイズは小さいですが、長浜城主もつとめた豊臣秀吉ゆかりの「長浜領朱印地石柱」や、京都に『一燈園』を開いた西田天香(長浜市名誉市民第一号)ゆかりの坐禅石も。

建物に入場し、1階・2階の主室から正面に眺められる庭園が主庭(南庭)。手前に広がる緩やかな斜面の芝生が“近代の日本庭園”としての雰囲気を醸し、その先には枯池と築山、そしてこちらも前庭に負けじと巨石がふんだんに配された庭園!琵琶湖の長浜港が近かったという立地を活かし、小川治兵衛は庭石を琵琶湖を船で運搬してきたそう。また、氏が好んだ「守山石」や、真黒石を多数使った沓脱石などの特徴も見られます(2階建の和風建築との組み合わせは京都の『白河院』に似てる)。
また、主屋と同じく平山久左衛門が手掛けた茶室『恵露庵』へ向けて主屋の前にある手水鉢もバカみたくデカい…。

このお庭の特徴の一つが前述の様な巨石を沢山用いられている点、もう一つが「琵琶湖の借景・眺望」。2階から庭園を眺めると、その奥には琵琶湖、そしてさらにその先に比良山系・比叡山の姿まで見渡せる——かつては慶雲館のすぐ裏までが琵琶湖だったそうなので、よりダイレクトにその借景がのぞめたんだろう——(今は埋め立てられた場所に建物があるので、庭の奥の植栽によってその目隠しをされています)。またかつては東には伊吹山ものぞめたそう。

浅見家の別邸・迎賓館として使われた後、1936年(昭和11年)に長浜市に寄贈。現在の形での一般公開が開始されたのは2004年(平成16年)と近年からですが、長浜の初春を盛り上げる『長浜盆梅展』の会場としては70年以上用いられ、市民憩いの庭園施設となっています。秋には『長浜グラスアート展』(ナガハマグラスフェス)も開催。

その庭園の素晴らしさはもちろん、駅から徒歩5分以内!という近さも嬉しい。お向かいには現存する日本最古の鉄道駅舎「長浜鉄道スクエア」の近代建築も。また、同じ長浜の『大通寺庭園』や、お隣・米原市の『青岸寺庭園』と合わせて、電車旅にもオススメの庭園!

(2011年3月、2016年3月、2018年11月、2020年11月、2025年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR北陸本線 長浜駅より徒歩4分

〒526-0067 滋賀県長浜市港町2-5 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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