重伝建・郡上八幡の江戸期の城主ゆかりの寺院に、開山・半山禅師の作庭した苔と岩壁の美しい庭園。
慈恩禅寺庭園“荎草園”について
「慈恩禅寺」(じおんぜんじ)は正式には“鍾山 慈恩護国禅寺”という名の寺院。江戸時代初期に創建時の住職・半山禅師により作庭された庭園“荎草園”(てっそうえん)は郡上市指定名勝となっています。
2019年夏、国の重要伝統的建造物群保存地区・郡上八幡の町並みへ初めて訪れました!先に紹介した『東氏館跡庭園』と併せて重伝建地区としてもずうっと訪れたいと思っていた郡上八幡!城下町であり、S字に町家が立ち並ぶ雰囲気からは旧街道の面影も残る素敵な町並み。郡上おどりの期間中ということで多くの観光客が訪れていました。街歩きもめっちゃ楽しかった…。
そんな郡上八幡のメインストリートからは外れた場所にあるのが慈恩禅寺。八幡城主・遠藤慶隆が1606年に京都・妙心寺の円明国師こと南化玄興を勤請し、その高弟・半山禅師により開山。当初は「慈恩寺」でしたが、江戸中期の1738年に「護国」の称号を賜り、慈恩護国禅寺⇒慈恩禅寺、と呼ばれるようになったとか。八幡城主・遠藤家、金森家のほか、土佐藩主として有名な山内一豊の妻・千代(見性院)ゆかりのお寺でもあるそう。
明治時代に天災により山門以外の伽藍を消失(ということは山門は江戸時代より残るもの?)。本堂、書院は明治29年に再建されたもので、庫裏はつい最近2015年に改築されたそう。赤石が印象的な枯山水の素敵な中庭があるのですが、これもその時に作庭されたものなのかな。
また寺宝として、国指定重要文化財の花園天皇筆による古文書や、岐阜県指定文化財となっている白隠禅師の書、後西天皇の書をはじめとする多くの市指定文化財を宝物殿に所蔵。
そして伽藍の奥にある池泉鑑賞式庭園“荎草園”が素晴らしい!座敷奥からのパノラマに心字池が広がる美しい庭園で――苔の緑も美しいのですが、背景の岩山の迫力だったりそこから自然の滝が流れ落ちるところ――同じ岩壁から採取されたと思われる護岸や自然石による灯籠。あと影で見えづらいのですが、自然の滝の右手側にも枯滝石組が見られます。
しかもこれで秋には紅葉がきれいと…否のうちようがない。ほんと暫くゆっくり眺めていたくなる庭園なのですが――案内板には「明治の被災以前は本堂の周辺一帯をめぐり(略)往時の雄大さは偲ぶべくもない」なんて一文も。偲ぶべくもないって手厳しい(笑)
しかし往時はもっとすごかったのか……。現在は座敷から眺めるのみですが、案内板に“池泉回遊式の禅宗庭園”とある通りかつては庭門の先、現在茶室があるところから山の方へ回っていけたのかなあ。茶室側からも眺めて見たい…また素晴らしい庭園を知ってしまった!
(2019年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
長良川鉄道越美南線 郡上八幡駅より徒歩20分強(※駅にレンタサイクルあり)
郡上八幡駅より路線バス「八幡愛宕町・慈恩禅寺前」バス停下車 徒歩2分
〒501-4222 岐阜県郡上市八幡町島谷339 MAP