薩摩・肥後の国境に位置する重要伝統的建造物群保存地区・出水麓武家屋敷群に残る最古の武家屋敷と庭園。
出水麓武家屋敷 税所邸庭園について
「税所邸」(さいしょてい)は国の重要伝統的建造物群保存地区である出水麓武家屋敷群の公開武家屋敷の一つで、現在の出水麓の武家屋敷の中では最古のものとされます。「旧税所家住宅」として出水市指定有形文化財。
江戸時代、薩摩藩は「外城制」という制度により多くの武士を鹿児島の城下町ではなく薩摩藩領内の各地に住まわせ、各地の城の麓に小さな城下町のような武家集落を形成させていました。その数は100以上に及んだとか。
それらの集落を「麓(ふもと)」と呼ぶようになり、現在では知覧麓、志布志麓の庭園群が国指定名勝に、知覧麓、入来麓、そしてこの出水麓は武家集落の雰囲気を色濃く残すことから重伝建に選定されています。
中でも「出水麓」(いずみふもと)は肥後国と隣接しているため最も古く最大規模をほこるとのこと。知覧麓や志布志麓に庭園群があるのだから、他の麓にも庭園群があってもおかしくないはず――そんな思いで初めて出水麓へ。
税所氏は関ヶ原の戦いの前年に鹿児島県南部の加世田から移住し、その後は上級郷士として出水麓では要職を務めました。武家屋敷には雨天時の弓の練習場所や隠れ部屋、抜け道など当時をしのばせるものが残されています。
また座敷から眺められる庭園はシンプルものですが、サツキ・ツツジにイヌマキ、そして幾つかの石が配されています。今回訪れたのは冬だったけど、生垣はサザンカによるものなのか花が咲いていました。
出水麓の庭園は知覧や志布志ほどの芸術性は無いかもしれません。その背景として、肥後国との国境にある出水麓は歴史上激戦区であり武家屋敷やその庭園にもより武道や戦略上の意味が込められていたから、と説明を受けました(たしかに知覧や志布志はその可能性が薄い)。より戦闘に備える為に実用的に造られた庭――というのもまた興味深い。
(2018年12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)