平成時代の京都で作庭された現代日本庭園の中では最も前衛的?な長野県の作庭家・園冶庭園研究企画創作所作庭の“仏神岩組雲海流水花庭”。額縁庭園“盤桓園”も有名。
宝泉院庭園“宝楽園”“盤桓園”“鶴亀庭園”について
「宝泉院」(ほうせんいん)は京都・大原を代表する寺院の一つ『大原寺 勝林院』に隣接する塔頭寺院。京都市指定天然記念物の巨大な五葉松を眺められる額縁庭園“盤桓園”、江戸時代中期に作庭の“鶴亀庭園”、そして平成年代/2000年代に作庭された現代の枯山水庭園“宝楽園”(作庭:園冶庭園研究企画創作所・山岸満多朗)と複数の庭園が見られます。
2022年秋に約3年ぶりに訪れた際の写真を追加して更新。
宝泉院の本院の『勝林院』は天台宗の開祖:伝教大師・最澄の弟子で天台宗の三代目を務めた慈覚大師・円仁により平安時代初期の835年(承和2年)に創建。以来、約1200年の歴史をほこる大原を代表する寺院。
それと隣接する宝泉院も歴史は古く、平安時代末期の創建。一時断絶したものの室町時代の1502年(文亀2年)に再興。現在の伽藍は江戸時代の初期〜中期にかけて構成されたもので、その書院・廊下は『正伝寺』、『源光庵』などと同じく“血天井”の痕跡の残る伏見城の遺構。
■鶴亀庭園(4〜7枚目)
建物の中で最初に鑑賞するのが池泉鑑賞式庭園“鶴亀庭園”。書院の再建と同時期、江戸時代中期の作庭のこの庭園は、その名の通り池が鶴の形を、そして奥の小さな築山を亀に見立て、吉兆を呼ぶ“鶴亀”を表したもの。ご覧の通り、秋には頭上に真っ赤な紅葉が!
■額縁庭園・五葉松(9〜12枚目)
書院から眺め見るのが額縁庭園こと“盤桓園”(ばんかんえん)。“立ち去りがたい庭”という意味が込められたこの庭園からは大原の山々を借景に眺めながら、拝観に含まれるお抹茶をいただくことができます。
この書院の真正面かつ、門を入って正面に見る大きなマツ(五葉松)。樹齢700年とも言われる名木で、京都市の天然記念物にも登録されています。その形は近江富士を表しているとか。
■茶室“日新庵”の庭(13〜14枚目)
屋内で見られるもう一つの庭園が、明治時代に建てられたという茶室“日新庵”の前に広がる池泉庭園。こちらも木々の風景が美しい!囲炉裏のある間はお寺っぽくなくて、山荘のような雰囲気。
■宝楽園(15〜27枚目)
そして宝泉院の中で最も大きな庭園が2005年(平成17年)に新たに作庭された回遊式枯山水庭園“宝楽園”。別名が“仏神岩組雲海流水花庭”。命名も見た目もなんだかアヴァンギャルドな他にあまり体験したことがないタイプの庭園…!
その意味するところは《地球太古の創世と、その原初の海》を想像して作庭された庭園。いわゆる仏教的な思想/神仙思想に結びつく三尊石や蓬莱山に見立てた石はあるものの、宗教的な思想よりも更に昔のものという発想の面白さ。ヨーロッパのストーンサークル的な石鳥居などデザイン的な斬新さもありつつ、秋には紅葉と白砂のコントラストが美しい。
この立派な石庭、てっきり京都の有名な方・会社の作庭かと思いきや、手掛けたのは長野県の作庭家・山岸満多朗(山岸万太郎)さん/園冶庭園研究企画創作所。元々は京都や東京で修行し、東京時代には皇居や『ホテルニューオータニ』にも入られていたとか(ということは岩城造園に居たのかな…?)。長野には小口基實さん以外にもこんな強烈な作庭家さんがいらっしゃったのか…。
最後に。この庭園は2019年7月の『niwasora night』で紹介されたことで知りました。ということでニワソラさんの紹介もあわせてご覧ください。
■ 有名な「額縁の庭」と「仏神岩組海流水回遊花庭」のハイテンションな庭 | ニワソラ
(2019年8月、2022年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)