岐阜公園“信長の庭” / 織田信長居館跡庭園

Gifu Park Nobunaga’s Garden, Gifu

織田信長の居城・岐阜城の山麓に開かれた都市公園は近代の代表するランドスケープデザイナー・長岡安平設計。近代の建築家・伊東忠太や武田五一の建築も!

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岐阜公園“信長の庭” / 織田信長居館跡庭園 / 岐阜城跡について

「岐阜公園」(ぎふこうえん)はかつて戦国武将・織田信長斎藤道三が居城『岐阜城』を構えた金華山の山麓に明治時代に開園した都市公園。その造園には近代を代表する作庭家/ランドスケープデザイナー・本多静六(調査)、長岡安平(設計)が関与。一帯は「岐阜城跡」として国指定史跡のほか、都市公園として日本の歴史公園100選に選定。園内には近代の有名建築家・伊東忠太武田五一による建築も点在。
近年(2010年代)、公園の一角の「織田信長居館跡」から庭園の遺構が発掘され、今後庭園としての整備が予定されています。

昔お城を見る為に訪れた岐阜公園。庭園目線で紹介できていなかったので、とても久々に(実質初めてのような気持ちで)訪れました。主に庭園のことを紹介するのですが、冒頭から内容盛りだくさん!

まずは岐阜城の歴史について。鎌倉時代に築城され、戦国時代に斎藤道三により整備された山城『稲葉山城』がその前身。
その道三の息子・斎藤龍興と織田信長による「稲葉山城の戦い」で信長が勝利すると、小牧からこちらに入城。年頃に大規模に整備され『岐阜城』が。以降、信長の子・織田信忠が城主となるなど織田家の拠点の一つとなりますが、本能寺の変や清洲会議、関ヶ原の戦いなどを経て、1601年に廃城となります。

時は流れて明治時代、各地の旧跡(城跡や旧寺領など)に都市公園が開園する流れの中で岐阜公園も1887年(明治21年)に開園。当初は京都の最古の公園と同名の『円山公園』と呼ばれていたとか。現在も公園の一角に残る老舗料亭『萬松館』は公園に訪れる人の迎賓館・倶楽部として設けられたもの。
開園からしばらくして1911年(明治44年)に更なる公園整備の為に“日本の公園の父”本多静六により調査を実施、大正時代に近代を代表する作庭家のひとり・長岡安平の設計の下で池泉や後述の三重塔が整備。昭和年代にもロープウェー開業など様々な改変を経て現代へと至ります。

■信長の庭(10~12枚目)
そんな岐阜公園に新たな日本庭園として2001年に作庭されたのが「信長の庭」で、ロープウェー乗り場のやや北側に位置します。尚、かつてこのエリアには動物園や水族館、図書館などの各種文化施設があったのだとか。

金華山を借景として、「剛」「静」「雅」と名付けられた3つの立派な滝から水が落ちる池泉庭園。そのデザインは、織田信長や彼が生きた《戦国時代の荒々しさをイメージ》した庭園で、長良川流域から採出した1,000トンもの川石をふんだんに用いて作庭されました。

■池泉庭園/噴水池(6~9枚目)
その「信長の庭」の南側にあるもう一つの池泉庭園。特に名称が無い様なので(昔の絵図を漁ると「噴水池」と書かれている?)、Wikipediaや一部観光サイトではこのお庭にも「信長の庭」のキャプションがついている(確かにそう命名してしまった方がわかりやすくはある…)けど、正確に言うと別物で、大正時代の鳥瞰図(参考:金華まちづくり協議会)にも描かれている池泉庭園。

現在は池泉の中に噴水はない(岐阜市歴史博物館の前にある「女神の噴水」にその座を譲っている)のですが、長岡安平が手掛けた都市公園には割と「噴水のある和風庭園」が多い(秋田『千秋公園』、新潟『白山公園』など)。庭園の雰囲気からしてもこれは長岡安平が設計した当時の庭園なんじゃないかと。

■織田信長居館跡庭園(13~18枚目)
噴水池の脇にある石段を登った先、ロープウェー乗り場や三重塔(国登録有形文化財)のある高台部が現在も発掘が進むかつての織田信長の居館跡、そして岩壁がかつての信長居館跡庭園(の一部)。岩壁の手前も現在は平地になっていますが、宣教師:ルイス・フロイスが残した文献や発掘調査から、池泉庭園があったとされています(イメージとしては多治見の『永保寺庭園』のような)。

その岩壁の並びにある朱色の橋から眺める渓谷も巨石が使われていて…安土城へ移る以前からの信長の権力誇示を感じられます。

■岐阜公園三重塔
信長居館跡庭園の岩壁に並び立つ三重塔。国登録有形文化財の歴史的建造物ですが、武将/城郭/寺社仏閣が由来のものでは実はなく…。
大正天皇御大典を記念して1916年(大正5年)に建立されたもので、設計は近代を代表する建築家のひとり・伊東忠太。またその場所は近代日本画家の巨匠・川合玉堂が風水を元に決めたのだとか。信長の庭園跡と知っていたらあえてこの場は選ばなかったかも…?笑。秋など内部の特別公開も行われます。

■茶室「華松軒」「青翠庵」(2~5枚目)
公園南入口から正面、『岐阜市歴史博物館』の向こうに位置する和風建築。現在に整備されたお茶室で、その前(と周囲)には茶庭も(茶庭を回遊できるのは貸室利用者のみ)。立札席では500円でお茶を一服いただけます。その傍らには山口誓子の句碑も。

岐阜市歴史博物館との並びにある『名和昆虫博物館』は、先の伊東忠太と同じく近代を代表する建築家・武田五一が手掛けているモダン建築(国登録有形文化財)。その名の通り昆虫に関する博物館で、約12,000種類もの昆虫標本を所蔵!
園内北部には「日中友好庭園」も。盛りだくさんの岐阜公園、歴史ファンのみならず建築・庭園ファンの方も足を運んでみて。

(2024年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR東海道本線 岐阜駅・名鉄 名鉄岐阜駅より3.5km
JR岐阜駅/名鉄岐阜駅より路線バス「岐阜公園歴史博物館前」バス停下車 徒歩5〜10分

〒500-8003 岐阜県岐阜市大宮町1丁目 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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