京都銀行の創業や山陰本線を開通させた実業家・田中源太郎の旧宅に七代目小川治兵衛が作庭した庭園。京都府指定名勝。
がんこ京都亀岡楽々荘庭園について
「亀岡 楽々荘」(かめおからくらくそう)は明治~大正時代に関西政財界で活躍した田中源太郎(京都・八瀬の大人気の紅葉の名所『瑠璃光院』の最初のオーナーと言った方がピンと来るかもしれない)が生家を改築・拡張した邸宅。
洋館・日本館・玄関の3棟が国登録有形文化財、そして七代目小川治兵衛(植治)により作庭された池泉回遊式庭園は京都府指定名勝となっています。
2020年にオープンしたサンガスタジアム by KYOCERAこと京都府立京都スタジアム。“亀岡なんてスタジアム以外に行く場所ないんでしょ”というビジターのサポーターに伝えたい。サンガスタジアムから駅を挟んで徒歩10分程の場所に、京都の庭園と言えばこの人!の庭師・七代目小川治兵衛の庭園が見られる和食レストランがあります!それがこちら。
京都市内の山縣有朋の旧宅跡『高瀬川二条苑』(第二無鄰菴)をはじめ、多くの歴史的和風建築をレストラン・料亭として再活用している「がんこ」の“お屋敷”シリーズ。楽々荘は昭和~平成にかけて約70年間旅館・ホテルとして運営されてきましたが、2018年にがんこフードサービスが借り受けレストランとして再オープンしました。
田中源太郎は幕末の亀岡藩の商家の生まれ。明治維新を迎え大人になった後は京都銀行の前身「亀岡銀行」の設立をはじめ30もの事業を展開、関西を代表する実業家の一人に。…ていうか京都銀行の創業の地が亀岡で、しかもこの場所だとは。(楽々荘の隣に現在も京都銀行が建ちます。石碑も。)
その後は政治家として衆議院議員・貴族院議員なども務め、現在は「トロッコ列車」でお馴染みの嵯峨野観光鉄道の前身となる国鉄・山陰本線も開業。そして自らの生家を現在も残る洋館と豪勢な和館に拡張しますが、自らの開業させた山陰本線に乗車中、保津峡での脱線事故に巻き込まれ逝去されました。そんな時代。
七代目小川治兵衛(植治)作庭のこの庭園は“丹波富士”牛松山を借景にしながら、保津峡の絶景を表現した“池泉回遊式すり鉢状庭園”。建物からすり鉢のように低く造られた池泉庭園、思い出すのは滋賀・長浜の国指定名勝『慶雲館庭園』。園内には樹齢360年のマツや亀山城から移設された豊臣の紋入りの井筒や春日灯篭も配されています。
庭園は食事をせずにも見学させていただくことができますが、食事をすると(&他の部屋が使われていなければ)国登録有形文化財の洋館や和館も見学できます(坪庭もあります)。建築の設計施工は清水組。
庭園から見ていると、和館よりも英国の技師によって建設されたミントブルーのコロニアル様式の洋館が目を引くのだけど、書院造りの日本館(和館)は中で見た方がそのスケールのデカさを感じられる。特に目を引くのは奥座敷にある違い棚。“天下の三棚”『修学院離宮』の霞棚のような――当時の田中源太郎の権力誇示を感じさせられる。
「亀岡は京都ちゃう」という人は少なくないと思うけど(笑)、亀岡と嵐山は快速で1駅10分程度。もしコロナ直前のインバウンド需要やスタジアムオープンがもう少し速く来ていたら、文化財を活用した高級旅館とかになっていたかもしれないよねえ…。(でも今も正直空いてるので、そういう意味でも試合前後の食事にもオススメ!)
最後に余談。「●指定名勝」って勿論 特別>国>都道府県>市町村 ってランク付けなのですが、“京都府指定名勝”って京都市内にはあまりないんですよね(『両足院庭園』ぐらい)。一方で、この亀岡市には4箇所も!
逆に「京都市指定名勝」はやたら多い。京都市とその他の京都府の自治体の財政面のバランスとかでそういう風になっているのかなあ…(市内のものはなるべく市が支える)とか思ったり。
(2019年8月、2021年3月・5月、2022年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)