平安時代の京都の有名陰陽師・安倍晴明が祈祷した旧跡の残る古刹。江戸時代から残る本堂の奥、磐田市指定天然記念物もある日本庭園“萬両園”と茶室“自笑庵”。
福王寺庭園“萬両園”について
「風祭山 福王寺」(ふくおうじ)は静岡県磐田市で平安時代から続く寺院。陰陽師・安倍晴明の旧跡や磐田市指定文化財を有するほか、本堂・書院の奥に池泉回遊式の日本庭園『萬両園』と茶室「自笑庵」があります。
Jリーグ・ジュビロ磐田のホームスタジアム「ヤマハスタジアム」と、国指定重要文化財『旧見付学校』のいずれからも徒歩20分ほどの場所に位置する「福王寺」。その歴史は古く、平安時代の900年代へとさかのぼります。
創建直後の984年(永観2年)、京都から諸国行脚に出ていた陰陽師・安倍晴明(京都『晴明神社』も有名)は遠江・見付の国府で暴風雨に見舞われます。地元にとって「これまでにない規模、この世の終わりか」と恐れられた暴風雨。しかし福王寺境内での晴明の祈祷によって暴風雨は収まったとか。
そのことから福王寺の山号が「風祭山」と称されるようになり、境内の「晴明堂」では“風の神様”として安倍晴明権現が祀られています。(ところで安倍晴明が立ち寄った時代の「今之浦」まで海が来ていたとか。へえ…)
その後、室町時代の1444年(文安元年)に天翁義一禅師が入った際に高野山真言宗から曹洞宗に改宗。本堂・山門は江戸時代からのものを残しつつ、庫裡や資料館「江月堂」、庭園の一角にある「不老閣」は近代和風建築?と多くの古建築が残ります。ご本尊の聖観音菩薩立像は行基の作と伝わり、磐田市指定有形文化財。
本堂・書院の裏手に日本庭園『萬両園』があります。案内板に「大庭園」とある通りかなり立派な庭園!
書院から正面に見て、手前には心字池。地形は緩やかな斜面になっていて、正面と向かって左手の奥に二つの立派な滝石組が配されています。また正面の高木は磐田市指定天然記念物のケヤキで、静岡県内最大規模のものだとか。
現在の庭園は「昭和61年に再建」されたもの。元々はいつの年代の庭園があったのか、一体これは地元の方が手掛けたのか…?京都や東京の作庭家が手掛けたのか…?気になる所ですが、代が変わって当時の事を知っている人はもう居ない…とのこと。
庭園の高台部にあるのがお茶室「自笑庵」。現在の建物は昭和年代に再建されたものだそうですが、元々は江戸時代中期の享保年間に同名のお茶室があったとか(※これはお寺の方ではなく茶道関係者の方が仰っていた情報)。とすると、萬両園も元は江戸時代中期頃の庭園だったのかな…。
更に庭園奥の竹林の中には、磐田市指定天然記念物となっている「アキザキヤツシロランの群生地」(※絶滅の心配もある希少種)も。また「自笑庵」では茶道宗徧流のお茶会が不定期で開催されているようです。
灯台下暗しで知らなかった地元の方々も、遠征ついでに寺社仏閣に立ち寄りたい方々もぜひ訪れてみて。
(2024年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)