旧岡家住宅(西の岡邸)

Former Okake House Garden, Tano, Kochi

タレント・ユージさん中心に修復された枯山水庭園をのぞむ、土佐藩の脇本陣だった豪商屋敷。高知県指定文化財。

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旧岡家住宅(西の岡邸)について

「旧岡家住宅」(きゅうおかけじゅうたく)は土佐藩主・山内家が本陣とした『岡御殿』の斜め向かいにある、かつて脇本陣として利用された豪商の邸宅。通称“西の岡邸”。岡御殿と同じく高知県指定有形文化財で、その枯山水庭園はタレントのユージさんを中心に2017年に修復されたものです。

2021年の年始、4年ぶりに高知県へ。ごめん・なはり線の終点一個手前の田野町。この“四国一小さな町”は参勤交代の街道筋として、また材木の集積する港町として、江戸時代には高知県東部の商業の中心として繁栄。この岡家をはじめ“田野五人衆”と呼ばれる豪商が軒を連ね、現在でも国登録有形文化財の建物がけっこう沢山残る古い町並みを残します。

その中で先に紹介した『岡御殿』が唯一の有料公開施設ですが、そのすぐ斜めの『旧岡家住宅』は無料公開。関係性としては岡家の分家にあたったそうで、脇本陣として藩の重臣の宿泊所・休憩所となっていました。

現在残るお屋敷は岡御殿の翌年、1843年(天保14年)の建築。岡御殿にはない格子窓や土間が現存していて、平成9年に高知県の文化財になり今日では赤色の塗が美しい書院造り建築が見られますが(無人で見ていいの?レベル)、数年前までは倒壊の危機に瀕するほど荒廃していたそう。

建物の修復の後、30年間放置されていた庭園の修復がはじまったのは高知県で「志国高知 幕末維新博」を控えた2017年。観光PRで高知県に訪れていたタレント・ユージさんに庭園修復の相談をしたところ、快く快諾。
その情報を看板で見た時は唐突感あったけど、テレビ番組『大改造!!劇的ビフォーアフター』の企画で数々のお庭の修復を行っていた(更に若い時は大工見習いで造園の仕事も経験していた)んですね。知らなかった。

ユージさんがプロジェクトリーダーとなった1年がかりの『旧岡家住宅庭再生プロジェクト』。埋もれていた飛び石や江戸時代の石組や枯流れもあらわになり、樹木も一部は既存のものを残しつつ小さな木に植え替えられ、今日では陽の入る明るい庭をのぞむことができます。

庭園としては岡御殿よりも広範囲に残っている。現在感じられる共通項は安芸山地を借景にのぞむ平庭という点だけど、きっと岡御殿の庭園もこのような石組や(温暖な地域ならではの)ソテツの植栽があったのではないか。
現在は敷地東部に入口があるけど元の玄関は建物西部にあるので、かつては建物奥=東部から庭園と山地をのぞむ…という感じだったんじゃないかな。縁側の目の前にある奇石による手水鉢?も洒落ててかっこいい。

町がこの庭園修復プロジェクトにつけていた事業費は約100万円。プロによる修復は難しい中で、地元の方々が“集える場”として歴史的な庭園を修復し、残したという事例はめちゃくちゃすごい(近い事例として丹波篠山の『住吉神社庭園』)。
なおこのご縁も含めて、今ではユージさんは高知県田野町の「公認キャラ」なんだそう。にしてもユージさんが造園経験者とは知らなかった。またぜひ歴史的庭園の修復に携わってほしい!

(2021年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線 田野駅より徒歩7分

〒781-6410 高知県安芸郡田野町1848 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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