圓通寺庭園Entsu-ji Temple Garden, Kyoto

後水尾天皇(上皇)が『修学院離宮』の前に造営した離宮の庭園は、京都を代表する借景庭園の一つ。国指定名勝。

庭園ギャラリーGarden Photo Gallery

圓通寺庭園について

「圓通寺」(えんつうじ)は江戸時代初期、後水尾上皇が造営した別荘「幡枝離宮」をルーツとし開かれた寺院。その枯山水庭園は後水尾上皇本人が作庭に携わったとも伝わり、比叡山を借景に取り入れた京都を代表する借景庭園として知られます。
京都の一年の人出のピークだった11月下旬の週末に、1年半ぶりに円通寺庭園へ!宝ヶ池の方で用事があったので、近くまで来たし――という感じだったのですが、意外と人が少なくて…静かに紅葉と比叡山の風景が眺められた。

江戸時代初期の京都の庭園に欠かせない第108代目天皇・後水尾天皇。皇位を譲り上皇となった後の1639年に洛北・幡枝の地に山荘「幡枝離宮」を造営されました(幡枝茶園、幡枝小御所とも)。この地以外にも岩倉、長谷の地にも山荘を造られたとされており、幡枝離宮の約20年後に『修学院離宮』が完成した後はそちらに出向くことが多くなり、この幡枝御殿は公家・近衛家に下賜。
1678年に寺院として開かれた際には上皇から現在の『大悲山』『圓通寺』の勅額を賜り、霊元天皇も勅願寺としました。御幸御殿とも言われます。

一面の苔の中に約40の石が配されている枯山水庭園は後水尾上皇本人も石を配し作庭に携わった?とも。この庭園はなんと言っても生垣の向こうに浮かぶ比叡山の借景が素晴らしい!離宮(山荘)をこの場所に作ったこと自体、比叡山のこの風景が眺められる場所というのが最大のポイントだったとも言われ、探し当てるまでに何年もかけたとか…。

今回は紅葉の写真を中心に追加していますが、紅葉だから良いというのではなく――苔庭を取り囲む生垣にはサザンカも含まれているらしいのできっと冬も花がきれいだろうし、冬でヒノキやモミジの葉が落ちた後はより視界が開けてその借景が楽しめる…とも言える庭園です。

この庭園で必ず語られるのは、この借景を守るために京都市が景観条例を定めたこと、またその前段階でランドスケープや庭園の先生方が景観保護に対して働きかけがされていたこと。
条例自体はこの庭園のためだけではないけれど、圓通寺から坂を下った周辺はニュータウンになっておりそれが火付けの一つだったことには違いなく――そこにうっかりマンションなんか立とうものなら400年紡がれた“美”が失われるおそれがあった。まあ新しい道路も便利っちゃ便利だとは思うので――そんな現代の生活と“歴史の美”を共に守ろうと官民あわせ取り組んでいた京都は進んでいたんだなぁとは思う。今もそうかもしれないけど。

ちなみに後水尾天皇が皇位を譲った109代目の明正天皇は皇子ではなく皇女で、その時点で約850年ぶりの女性天皇だったそう…!…そんな破天荒な決断をしちゃう方だったから、庭園においてもスケールの大きな世界を好み、表現できていたのかもしれない。
穴場というほど知名度が無いわけじゃないけど、紅葉の季節に今回ぐらいの人の数ならまだまだ京都以外の一般的な知名度は高くないのかなあ…人の多い京都に疲れた人にこそ、ぜひこの庭園の風景を眺めに訪れてみて。

(2018年3月、2019年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

叡山電鉄鞍馬線 京都精華大前駅より徒歩約15分
京都市営地下鉄 北山駅より徒歩約25分
最寄バス停は「円通寺道」バス停下車 徒歩8分

〒606-0015 京都府京都市左京区岩倉幡枝町389 MAP

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