
国選定重要伝統的建造物群保存地区・矢掛の町並みの一角に佇む、昭和を代表する作庭家・重森三玲が構想し重森完途が作庭した枯山水庭園。
江尻記念館庭園について
「江尻記念館」(えじりきねんかん)は国選定の重要伝統的建造物群保存地区「矢掛町矢掛宿」の町並みの一角にある町営施設(集会場)。『やかげ郷土美術館』に隣接。その庭園は、昭和を代表する作庭家・重森三玲の構想の下で、その子・重森完途により作庭された枯山水庭園。
ローカル線の井原鉄道の駅から徒歩10分程、2020年に重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定された岡山県・矢掛の古い町並み。現代には幹線から外れましたがかつては山陽道(西国街道)の宿場町として栄え、約1kmの区間に江戸時代~近代の古い町家/商家/そしてレトロな建築がズラリと並びます。ちなみに江戸時代初めにこの矢掛を含む備中国を治めたのは庭園でも有名な小堀遠州。遠州の書状にも矢掛は登場したとか。
そんな矢掛宿には大名や幕府役人など要人が宿泊所・休憩所とした本陣の『石井家住宅』と脇本陣『髙草家住宅』が江戸時代の姿のまま現存。いずれも国指定重要文化財で、『本陣と脇本陣が共に重要文化財クラスで現存』しているのは日本全国で見ても矢掛だけ!と言う貴重な場所。
そんな矢掛の町家の庭園を色々紹介してきましたが…実は、昭和の人気作庭家・重森三玲がデザイン/構想した庭園が。『やかげ郷土美術館』に隣接する昭和レトロな建築『江尻記念館』。普段は(町民の利用がない時には)カーゲートも閉まっており案内板も無いので、一見すると個人邸かな…?といった感じなのですが、現在は矢掛町有の集会施設/生涯学習施設等として活用されている建物。元は大正時代~昭和時代に掛けて矢掛の地域医療を支えた医師・江尻悟さんが運営した旧『江尻内科』だった建物。氏が亡くなられた後、御遺志によって矢掛町に寄贈され1998年より町有施設として活用。
カーゲート越しにも見える枯山水庭園。立派な枯山水だなあーーと内心思っていたのですが、実はこのお庭、重森三玲がデザイン/構想し、その子で自らも作庭家/庭園研究者として活躍された重森完途さんにより1977年(昭和52年)に作庭されたもの(なお、この枯山水の他にも「別邸露地」も手掛けられていたとか)。そう言われてみるとーー通り沿いの、きれいに市松模様に刈り込まれた生垣もとても特徴的だし目を引く。
通常はカーゲート越しに眺める形となりますが、1~2年に一回程度?矢掛町内で庭園を鑑賞する街歩きイベントも開催されているそう。旅行で矢掛を訪れる際にはぜひ立ち寄ってみて。
(2018年5月、2023年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
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