世界中から集められた竹の数は日本一。水俣の川と海を表現した、大規模な池泉回遊式庭園。
竹林園(エコパーク水俣)について
「エコパーク水俣」は水俣湾に面した都市公園で、41ヘクタールという広さを誇る敷地の中には陸上競技場やサッカー場といったスポーツ施設から、道の駅、バラ園、そして水俣病資料館といった施設も。その公園の中で最も早く完成(1990年代)し、最も駅や市街地に近いのが日本庭園「竹林園」。
まず県外、それも遠くの身からすると水俣といえばやはり「水俣病」の印象が強い。まさにこの公園がある場所は、かつて水銀により汚染された水俣湾の一部、湾内に堆積した水銀ヘドロを封じ込めて埋め立てられた土地。
この「エコパーク水俣」は、環境破壊の悲惨さや環境保護の大切さを後世に伝える為に、そして環境問題の提唱の地といったテーマを掲げ、熊本県と水俣市によって整備された緑と自然豊かな公園です。
「竹林園」は東京ドーム約1個分の広さを誇る日本庭園で、その名の通り約160種類という竹を主体とした庭園になっています。世界中から集めたこの竹の種類は日本一だそう。この池泉回遊式庭園のテーマは『水俣の海と川の風景』。園内を流れる小川は水俣川を、そして池泉庭を水俣湾を表し、その石組は不知火海のリアス式海岸の風景を表現したもの。なので石組も非常に良い庭園。
現段階では造園をされた業者等の詳細は不明なのですが、「多くの人がイメージする日本庭園」といった観点からすると九州で見られる池泉回遊式庭園の中では最もオーソドックスで完成度高くそれに近いのでは?と思いました。北西側に見える台地の借景も自然味をより際立たせていて良い。
今回は冬場だったので見られる花はなかったけど、初夏には花菖蒲の名所になるそうです。バラ園ともどもまた別の季節にも見てみたいなあ。ちなみに公園内(だけど徒歩10分以上の距離がある)の「海の広場」も池泉回遊式庭園風っぽいので次はそこもチェックしよう…。
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上記に書いた通り、天気が良くて季節が変わればもっともっと魅力的な日本庭園だと思ったのですが、2012年の水俣市の会議議事録を読むと、近年は割と入場者数が減少しており「大々的な改修を、熊本県と協力して、現在計画中である。」とのこと。
ううーん、クオリティだけならば今のままでも十分魅力的な庭園だとは思うのですが、そもそも「水俣に日本庭園を観に行くか」と言ったら、行かないよなあ…。無料の庭園だけど広いから維持費もそこそこ掛かっているのだろうし、観光施設として考えるのならばあの公園の導入部が日本庭園でいいのか、と考えるのもわからないでもない。
ただ個人として思うのは、そもそもいくら海外で「日本庭園」の評価が高まっているとはいえ、若年の頃に身近に「日本庭園」を見る機会がある日本人って一握りだと思って。こんな広い池泉回遊式庭園があるの、大名庭園がある一部の都市や、大都市しかないと思う。
「海外の人が魅力的に感じる日本庭園」がどんなものか日本人自身が知る――そうした教育の場としても、この日本庭園は意味があるとは思うのだけど、どうだろうなあー…。有名庭園が100年、200年と時を重ねて今広く愛されているように、この庭園も味が出てくるのはまだこれから。市民に愛される存在であることを願います。なお水俣市には「徳富蘇峰」の生家があります。たとえば東京の「蘆花恒春園」と連携して歴史的な要素を持たせられないかとか…。
(2018年12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
肥薩おれんじ鉄道 水俣駅より徒歩約10〜15分 ※駅にレンタサイクルあり?
JR九州新幹線 新水俣駅よりコミュニティバス「港町」バス停下車 徒歩3分
〒867-0054 熊本県水俣市汐見町1丁目231-12 MAP