紅葉の時期に一層美しい市松模様の苔庭“無相の庭”。松尾芭蕉の高弟・各務支考の住居跡“獅子庵”も。
大智寺庭園“無相の庭”について
「雲黄山大智寺」(だいちじ)は岐阜市の郊外にある臨済宗妙心寺派の寺院で、先に紹介した岐阜市指定名勝『真長寺の石庭』から程近く(徒歩約15分)。岐阜県指定史跡となっている松尾芭蕉の弟子・各務支考の住居“獅子庵”、県指定天然記念物の大ヒノキ、そして市松模様の苔庭“無相の庭”があります。
『真長寺の石庭』の紹介の中で、Googleマップを眺めていて見つけた――と書いたのですが、このお寺さんも同じ。最初に気になったのはこのお寺の前庭となっている“得月池”でした。池泉庭園っぽいなあ、と思って見に行ったのだけど――それよりも苔庭の方に惹かれた!
大智寺が開かれたのは約800年前(鎌倉時代の初め?)。その後は一時荒廃し、室町時代の1500年に当地の北野城主・鷲見美作守保重が菩提寺として再建。江戸時代には幕府より葵の紋の使用を許されたそうで、現在も山門の後の通用門には葵の御紋の書かれた暖簾?が掲げられていました。その通用門の先にあるのが岐阜県指定天然記念物の大ヒノキで、樹齢7〜800年を越し岐阜県内で2番目の大きさをほこるそう。
本堂へ至る前庭として広がるのは、一面の苔に石版を配し市松模様にした苔庭“無相の庭”。いつ作られたものなのか、また作者等に関する記述はサイトにも現地にも無かったので不明。おそらく重森三玲の京都『東福寺本坊庭園』に影響を受けたものなのかなあ…とは思いますが、そういった前知識はさておき。広範囲の苔は純粋に心洗われる――真長寺もそうだけど、この辺は苔が生きやすい気候なんだろうか。この日も(台風一過で)お手入れに入ってる方がいらっしゃって…お手入れの賜物でもあるんだろうな。
この苔庭の間間にはモミジの木が植えられていて、秋にはこの苔の上に真っ赤な葉が落ちる姿が見られるそう。他の方の写真を見るとめちゃめちゃきれい。お近くの方は紅葉の時期に訪れてみてほしい!また庭園の先に見える土塀のデザインも気になる!ベースは『熱田神宮』でも見られる“信長塀”なんだそうですが、この瓦の見せ方はご住職本人考案なんだそう。
最初これは日本庭園かもしれないと思った“得月池”の畔にある岐阜県指定史跡の『獅子庵』は松尾芭蕉十哲(蕉門十哲)に挙げられる高弟・各務支考の住居。ちなみに先日紹介した京都の『落柿舎』の向井去来も蕉門十哲のひとり。
各務支考は当地で生まれ幼少期から大智寺で修行に入ったものの、20歳を前にして仏門を離れ、26歳の時に近江に居た松尾芭蕉の元を訪ね弟子入り。それ以降は芭蕉に従い各地を遊行し、芭蕉が亡くなる際には遺書を代筆する役も任される程信頼を得ていたそう。
弟子入りから約20年後の1711年に岐阜のこの地に戻り、この“獅子庵”を拠点に俳諧の普及に努めました。各種案内によると「現存する」ようなのだけど、今回見た建物はやけに新しく感じる…と思って大智寺のサイトの案内を見ると、2013年以降に修復のための解体復元工事が行われたようです。公開に関する情報はないけど内部を見る機会があれば見てみたいな〜。
なお得月池は彼岸花の名所でもあるそう。紹介する頃には見頃が過ぎてしまってるけど…次回訪れる時にはその風景を見てみたい。
(2019年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR岐阜駅より路線バス「三輪」バス停下車 徒歩10分
長良川鉄道越美南線 関駅より8.5km(レンタサイクルあり)
〒501-2502 岐阜県岐阜市山県北野668-1 MAP