18年連続“庭園日本一”。横山大観を愛した実業家が中根金作・小島佐一と作庭した現代の日本庭園の最高峰。
足立美術館庭園について
「足立美術館庭園」(あだちびじゅつかんていえん)は海外日本庭園専門誌『The Journal of Japanese Gardening』で初回から十数年連続で1位に選ばれている、現代日本庭園の最高傑作の一つ。
足立全康が構想し、現代日本を代表する作庭家・中根金作により手掛けられました。また施工には京都の名工・小島佐一らが参加。
2020年11月に約4年ぶりに訪れました。冬・夏と来て初めての秋の足立美術館。庭園や借景となっている山々の紅葉がちょうど良い時期!
当地に生まれ、大阪で繊維問屋/不動産業で成功した実業家・足立全康が“地元への恩返し”との想いから1970年(昭和45年)に財団法人足立美術館を設立、開館。
“大観美術館”とも呼ばれるほどの横山大観のコレクションを有し、それ以外にも竹内栖鳳、上村松園、橋本関雪、川合玉堂、菱田春草、小林古径、川端龍子、伊東深水などの近代日本画の巨匠たちや、陶芸家/美食家・北大路魯山人や彫刻家・平櫛田中の作品など所蔵する作品は約2,000点。2020年には新たに『魯山人館』がオープン。
足立全康が絵画のコレクションとともに情熱を注いだのが“庭園”。
「庭園もまた一幅の絵画である」と語り、当初より日本画と四季の美しい日本庭園の調和を基本方針として、“昭和の小堀遠州”と呼ばれた名作庭家・中根金作とともに広さ約5万坪という広大な日本庭園を作り上げました。
■苔庭(5~8枚目)
主庭“枯山水庭”のエントランス的な庭園。主庭の築山が芝が張られているのに対し、こちらはスギゴケをはじめとする苔が張られていることから“苔庭”。
茶室「環翠庵」の前にある鎌倉時代作の十三重石塔は和歌山の国指定名勝『養翠園』を造営した紀州藩十代目藩主・徳川治寶ゆかりの石造物でもあり、重要美術品に指定。
■枯山水庭(10~15枚目)
足立美術館の主庭。この地域で最も高い京羅木山を中心とする山々を借景とし、その間には何の現代的なものも写り込まない、広大な枯山水庭園。
庭園中央の立石が山々を、そしてカーブして描かれた白砂は大河を表しており、山から注がれた滝水によって大河が生まれる雄大な山河の景が表現されています。
■池庭(16枚目)
喫茶室「大観」からものぞむことができる池泉鑑賞式庭園。石橋から右手の部分は足立美術館で最も古い、1968年(昭和43年)より作庭されたもの。正面にある茶室「清風」は芦屋市の故・広瀬勝代さんより寄贈されたもの。
■白砂青松庭(19~22枚目)
足立美術館のもう一つの主庭がこの白砂青松庭。足立全康が横山大観の名作『白沙青松』にインスパイアされ作庭した庭園で、山の借景はそのままに砂地の中に数多くのクロマツ、アカマツが植えられ、その中央に滝と池が配されています。
最初の苔庭が“京風”、そして枯山水庭が京都を拠点にしていた中根金作・小島佐一の色が出ているとしたら、(歩くことはできないけど)その飛び石の高さから見ても最後のこの庭園は“出雲流庭園”としての色が濃く出ている。
そして足立美術館の庭園の一番右手に見える大きな滝が“亀鶴の滝”。この自然の山の中腹からまんま水を落としている豪快な15mもの滝は、1978年に開館8周年を記念して造られたもの。これもまた、大観の『那智乃瀧』という作品をモチーフとしたものだそう。
自分にとっては初めて訪れた島根県の庭園は足立美術館であり、年を重ねるごとに『庭園日本一』の地位を確立しているなあと感じる一方で。
この旅行で雲州の庭園を約30箇所巡って「足立全康だけが特別で異質だったのではない、松江・出雲には独自の“庭園文化”が深く根付いていてそれがバックグラウンドにあったのだ」と思ったので(氏のルーツとなる庭園があったことも)、紹介し終わった頃にその話を書きたい…。
また他の一般的な“庭園”と比べて入場料は少々高いですが、逆で日本庭園が“それ位の価値ある芸術”として徐々に認知されるようになってほしいなと思う。美術品とともに総合芸術として楽しまれるように。
(2012年1月、2016年8月、2020年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR山陰本線 安来駅よりシャトルバスで約20分
※皆毛温泉・JR米子駅からの直通バスもあり(※2021年3月31日まで運休中)
※その他路線バスはこちら。
〒692-0064 島根県安来市古川町320 MAP