遍照院庭園

Hensho-in Temple Garden, Kurume, Fukuoka

昭和の有名庭園研究家・森蘊が作庭した庭園と茶室“以白庵”。江戸中期の思想家・高山彦九郎の墓所は国指定史跡。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

遍照院庭園について

「光明山 遍照院」(へんしょういん)は久留米市中心部の寺町にある寺院。吉田松陰ら幕末の志士にも影響を与えた江戸時代中期の思想家、勤皇志士・高山彦九郎の墓所は国指定史跡となっています。そして昭和を代表する造園史家・森蘊さんにより作庭された池泉回遊式庭園と、高山彦九郎の法名「松陰以白居士」にちなんで名付けられた茶室“以白庵”があります。更にちなむと、吉田松陰の「松陰」の名も高山の法名から取られたもの。

2020年冬、5年ぶりに八女福島を訪れる際に西鉄久留米駅でバスに乗換えたので、駅から程近いこの庭園にも約4年ぶりに訪れました。
前述の通り、高山彦九郎は後に政権交代を果たす幕末の志士に大きな影響を与えた人物で、京都の三条大橋には現在も銅像が残ります。最期は九州に渡り、幕府の監視から逃れる中でこの久留米で自刃。

高山彦九郎の墓所の脇にある日本庭園は、昭和35年にシューズメーカーとして有名な月星化成(現・ムーンスター)の寄贈により奈良国立文化財研究所に在籍していた森蘊(もりおさむ)さんによって作庭されたもの。庭園史家としては数多くの庭園研究・修復を手掛け、関西でも『普門寺庭園』や『橿原神宮文華殿』の庭園を手掛けていますが、自分が初めて見た森薀庭園はここでした。自由拝観ですが、17時には閉門になります。

最初は池泉回遊式庭園の方に目がいっていたけど、何度か訪れると見方も違ってくる。まず入口から近いところにある枯山水庭園ゾーンは『鳥獣戯画』に描かれている動物の遊び戯れる様子を表現したもの。マツの下に敷かれた苔も京風を感じさせる。
そして池泉回遊式庭園の中にある中島の石組も改めて見るとかっこいいし、その石橋は高山彦九郎ゆかりの三条大橋を模しているそう。

そして茶室“以白庵”をね…前回来た時に完全にスルーしていたのです。京都から移築された茶室だそうですが、詳細は不明…(でもその時代に存在し移築するぐらいだから、結構由緒あるんじゃないか)。京都から運ばれた赤い鞍馬石も時折使われている飛び石も、三叉路のように配されていて面白い。市民の方は予約すれば利用することも可能だそうです。

今回は冬だったので植栽が寂しかったけれど、最初春に訪れた時の写真を見るとノムラモミジやツツジが彩る、カラフルな庭園でもあった。久留米行く際にはまた訪れたい庭園です。…そしてこの寺院の向かいにある変わった本堂の『徳雲寺』。こちらは、昭和のモダニズム建築を代表する建築家のひとり、菊竹清訓の手掛けたもの。好きな方はこちらも!

(2016年4月、2018年10月、2020年2月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・交通 / Locations

西鉄天神大牟田線 西鉄久留米駅から徒歩約15分、櫛原駅から徒歩約8分
西鉄久留米駅前にレンタサイクルあり

〒830-0014 福岡県久留米市寺町56 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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