世界的建築家・谷口吉生が設計を手掛けた貴重な茶室建築。枯山水の前庭と“流れ”が印象的な回遊式日本庭園も。
浜松市茶室「松韻亭」について
浜松市茶室「松韻亭」(しょういんてい)は徳川家康や江戸時代の老中・水野忠邦、松平信祝らが居城とした城郭『浜松城』の北部に1997年(平成9年)にオープンした市民茶室。
その設計は『ニューヨーク近代美術館』(MoMA)など世界的な建築も手がける、現代日本を代表する建築家のひとり・谷口吉生によるもの。これまで何度か訪れていますが、2020年12月初旬に訪れた際の写真を更新。
地元で暮らしていた頃は全く気に留めたことがなかった浜松市茶室…駅からも微妙に遠いし。松韻亭の存在を知ったのも、谷口吉生さんの他地域での建築や掛川市にある『資生堂アートハウス』に訪れる過程で、「あれ、浜松にもあるじゃん」と知り。そして訪れてみると裏には日本庭園もあった。
そして今回訪れたのは4回目、初めて訪れてから約8年。最初は芝生のお庭だったけど、今では苔の広がるお庭になっている(今回は紅葉もピーク!)。庭園は立礼席での呈茶(400円)ののち回遊することができます。
主棟“松韻亭”、離れ棟“萩庵”という2つの茶室と池泉回遊式庭園で構成される松韻亭。建物の施工は創業100年以上の歴史をほこる東日本の数寄屋造建築の第一人者・水澤工務店。庭園の作庭は昭和の東京を代表する造園家・岩城亘太郎の興した岩城造園(←FBで教えていただきました)という豪華キャスト。
その緩やかな斜面の中の水の“流れ”を主体とした庭園…設計者は異なりますが、水澤文次郎と岩城亘太郎がともに携わった御殿場の元総理大臣の別荘『東山旧岸邸』の庭園を連想する。自然が少なく現代的な浜松の街中において隔絶されたかのような木々の風景も◎。
今回気づいたのは、主棟の立礼席の天井の照明が谷口吉生さんの父・谷口吉郎の手掛けた『赤坂離宮 和風別館“游心亭”』と同じ(オマージュ)になっていること。もっと言うと、美術館など大型建築が多くかつ合理的なフレーミングが美しい作風の氏において、小規模な和風建築である松韻亭ってめっちゃくちゃ貴重じゃない……?(*松韻亭を手がける2年前に同じく水澤工務店と『豊田市美術館』の茶室“童子苑”は手掛けられている)
2019年5月、国土交通省の提唱した『ジャパンガーデンツーリズム』の第一弾に登録された『アメイジングガーデン・浜名湖』に松韻亭の庭園も構成されていて(これは超意外だった)、観光スポットとしての認知も多少高まるかもしれないけどーー庭園ファンとしては庭園が注目されるのも嬉しいけど、でもやっぱもっと建築巡礼されている建築ファンに気づいてくれたら嬉しいな。そして建築の写真を撮って終わりではなく、お茶を一服。
(2013年3月、2015年11月、2020年12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR東海道新幹線 浜松駅より約2km(徒歩25分)
遠州鉄道 遠州病院駅より徒歩15分
浜松駅より路線バス「コンコルド前」「鹿谷町南」バス停下車徒歩5分
〒432-8014 静岡県浜松市中区鹿谷町11-4 MAP