龍吟庵庭園

Tofukuji Temple Ryoginan Garden, Kyoto

“永遠のモダン”作庭家・重森三玲が東福寺に作庭した通常非公開の枯山水庭園はアヴァンギャルドでカッコいい名作…“国内最古の方丈建築”は国宝。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

東福寺 龍吟庵庭園について

【通常非公開・期間限定公開】
「龍吟庵」(りょうぎんあん)は京都を代表する寺院の一つ『東福寺』の塔頭寺院の一つ。「本坊」の裏手(東側)に位置しており、「現存する最古の方丈建築」とされる方丈が国宝。作庭家・重森三玲の作庭による3つの枯山水庭園があります。
通常非公開ですが、例年3月14〜16日頃と秋の紅葉時期(11月初旬〜12月初旬)に期間で限定公開/特別拝観があります。詳しい日程は東福寺の公式サイトをご覧ください。

コロナ禍や方丈の修復工事によりしばらく特別拝観もお休みされていましたが。2023年秋に3年ぶりの公開。早速訪れたのでその時の写真を追加しながら紹介。

モダンな枯山水庭園で知られる、昭和の京都を代表する造園家・重森三玲。氏の代表作の一つが市松模様の苔庭などが有名な『東福寺本坊庭園』(八相の庭)。そんな東福寺境内の最奥、「偃月橋」を渡った先に通常非公開の“もう一つのモダンな枯山水”があります。

創建は鎌倉時代。同じく京都を代表する禅寺『南禅寺』を開き、東福寺の三代住職をつとめた大明国師(無関普門)の住居跡であり、東福寺の塔頭の中では最も格が高い(第一位)のが「龍吟庵」。室町時代初期/南北朝時代の1387年(嘉慶元年)に建築されたのが現在も残る「方丈」で、冒頭の通り「現存する国内最古の方丈建築」。貴族の時代(平安時代)の「寝殿造り」から武家の時代に主流となっていく「書院造」へ変遷する時代ならではの、双方の特徴が見られるとか。
その他にも桃山時代に建築の表門や、方丈に隣接する庫裏も国指定重要文化財。

その方丈の東・西・南の三方に、重森三玲により手掛けられた3つの枯山水庭園があります。いずれも『八相の庭』から25年経過して氏が円熟期に入った1964年(昭和39年)の作庭。

■無の庭(南庭)
方丈の正面、一面に白砂を敷き詰めた石庭。重要文化財の表門が引き立つ。

■龍の庭(龍門の庭/西庭)
方丈の西側、「龍吟庵」の寺名にちなみ、龍が海中から浮かび上がる姿を石組によって抽象的に表現した庭園。
弧を描いたモルタルによって区切られた黒い砂は黒雲を、白砂は海を表現し、そして竹垣には稲妻模様が表現されています。

■不離の庭(東庭)
方丈と庫裡の中庭で、京都の銘石・鞍馬の赤石による一面の赤砂が特徴的な石庭。大明国師が狼に襲撃されそうになったところを、2頭の犬が守ってくれた――というエピソードをその石組によって表現。

龍吟庵の庭園は京都に数ある重森三玲の庭園の中でも最も先鋭的/前衛的/アヴァンギャルドな枯山水庭園ーーといった作風で、シンプルに“めちゃくちゃカッコいい!”。また「龍の庭」「不離の庭」は雨に濡れた時により黒砂・赤砂の色が際立つので、雨の日や雨が降った後にぜひ狙って訪れて欲しい庭園でもあります。(なお、龍吟庵の特別公開中はスタッフの方が歴史や建築等についでガイドしてくださるので、ぜひそちらも聴いてみて。)

また12月に入り、紅葉の落葉が進んだ頃も冒頭の写真のような――白砂の中への紅葉の落葉がまた一つのアクセントとなる、美しい姿が見られます…!赤い血や絵の具で染まったような枯山水庭園――もまたカッコよし。

(2015年3月、2018年3月・11月、2019年12月、2023年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR奈良線・京阪本線 東福寺駅より徒歩12分

〒605-0981 京都府京都市東山区本町15丁目812 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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