天寿園

Tenjuen Garden, Niigata

アルビレックス新潟のスタジアム・ビッグスワンからすぐ!巨匠・村野藤吾最後の建築“瞑想館”と中根金作作庭の日本庭園。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

天寿園について

「天寿園」(てんじゅえん)は新潟駅の南部、“鳥屋野潟”湖畔のJリーグ・アルビレックス新潟のホームスタジアム・デンカビッグスワンスタジアムから徒歩10分と程近くにある日本庭園。
その庭園は“18年連続庭園日本一”『足立美術館庭園』の作者・中根金作の作庭、庭園中央に佇む“瞑想館”は昭和の日本を代表する建築家・村野藤吾の遺作…と両巨匠がコラボした庭園です。入場無料!

2021年11月、試合前に約5年半ぶりに訪れたのでその時の写真を更新。なお前述の日本庭園・建築のほかに“中国式庭園”が天寿園の目玉で――初めて訪れた2015年頃までは確か施設名も《「天寿園」》みたいな感じで中国庭園推しだった記憶がある。

だから自分も最初は(日本庭園と比べると)興味は薄くて――最初訪れたのも《水と土の芸術祭》のアート作品が展示されているからだったんだけど、「あれ、中国庭園と思ってたけど立派な日本庭園もあるじゃん」と。
その後しばらくして、村野藤吾やの業務歴をそれぞれ見る中で「え、あれって村野藤吾だったのか」「あれって中根金作だったのか」と知り…。

中国庭園として推すには勿体ない人が関わっているよな~と思っていたんだけど、近年公式HPや施設内の看板がリニューアルされた際に「足立美術館庭園を作った中根金作の日本庭園」という点もちゃんとPRされるように変わってました。

天寿園の開館は1988年(昭和63年)。新潟県にはもう一つ村野藤吾の建築と中根金作の庭園が併設する『谷村美術館・玉翠園』(糸魚川市)がありますが、実はこの天寿園も谷村美術館を創設した「谷村建設」創業者・谷村繁雄さんがリードし造営されたもの。

園内の「天寿園記」の碑によると《第二次世界大戦後に大陸に取り残された日本人の孤児を恩讐をこえて慈しみ成人させた中国の方への感謝を表するため、またその日本人の心の拠り所》として谷村繁雄さんにより日中双方に造園・寄贈することを構想。先の1984年に北京市に日本庭園『翠石園』が作庭された後に、日本側の中国庭園としてこの庭園が完成しました。なので施設の成り立ち的にはメインは中国庭園ではある。

しかしながら天寿園の竣工前に谷村繁雄さんは逝去。キーマンを失った庭園はバブルが弾けると長続きせず、1994年(平成6年)に閉園~1995年からは新潟市営の施設として再開園。
一歩間違えればバブルの負の遺産になりかねない状況だった所、2002年のサッカー・ワールドカップへ向けたビッグスワンの新築や鳥屋野潟一帯の都市公園としての整備――というのがこの庭園にとっては追い風になったのかなあ。

■日本庭園
“清五郎潟”を表現したかのような大きな池の周囲の景色のうつり変わりを楽しむ築山林泉式の庭園。
庭園の南東部の迫力ある三段の滝や池に浮かぶ亀島、数々のマツの植栽――など伝統的な日本庭園らしさが見える――んだけどやっぱ村野藤吾の瞑想館の存在感こそがこの庭園の唯一無二なところ。ビッグスワンも見える!

また茶室や大広間の前の曲水の流れと四季の花々の咲く庭園も良い。桜もあります。

■瞑想館
1984年に亡くなられた村野藤吾の遺作として1988年に竣工。極楽浄土の世界の花:蓮の花をイメージしたデザインが特徴的で、その内部も教会や美術ホールのような感じ。

村野藤吾作とされるのはこの瞑想館だけなんだけど、メインの建物(ホール・大広間)や茶室も銅板屋根やそれプラス瓦って感じは村野藤吾のチームが手掛けてるのかな、って感じがする。最初訪れた頃は村野藤吾の建築もそこまで意識して見ていたわけじゃなかったから“中国風なのかな”とか勝手に思ってたけど――同じく遺作の『三養荘』『ザ・プリンス京都宝ヶ池』と似た雰囲気あるよなーというか、公式サイトで見られる茶室や大広間の内装もガチの古風な茶室というより、村野藤吾っぽいエッセンスというか。

■中国庭園
庭石や建築資材も中国から運ばれ、設計・施工を北京市林園局が手掛けた“日本初の池泉回遊式中国山水庭園”。
中国のかつての宮廷庭園に習って8つの風景区から構成され、の門を思わす“福寿康寧”から始まり、“玉泉観魚”、“浮玉堂”、“纓絡流觴”、仙人の住む滝“湖山真意”、“双環万寿亭”、“勺舫横渡”、“綉臥波”…の八景を巡ります。確かに日本国内の中国庭園としては本格的!

建物内(レストハウス)にはカフェもあります。早くスタジアムへ来ちゃったけど観光スポットないかな…というサポーターの方はぜひ足を運んでみて。

(2015年9月、2016年4月、2021年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR上越新幹線 新潟駅より約5km(駅周辺にレンタサイクルあり)
新潟駅南口より路線バス「天寿園前」バス停下車すぐ

〒950-0933 新潟県新潟市中央区清五郎633-8 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
PICK UP / COLUMN
最新の庭園情報は約10万人がフォローする
【おにわさん】のSNSから。