四天王寺本坊庭園

Shitennoji Temple Honbo Garden, Osaka

江戸幕府2代目将軍・徳川秀忠により再興された国重要文化財建築と、茶人・木津聿斎の手掛けた2つの庭園「補陀落の庭」「極楽浄土の庭」。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

四天王寺本坊庭園 極楽浄土の庭・補陀落の庭について

「四天王寺」(してんのうじ)は聖徳太子により建立されたと伝わる大阪を代表する寺院であり、日本で最も古いお寺の一つとも言われます。その境内は「四天王寺旧境内」として国指定史跡であり、多くのを所蔵。「天王寺」という駅名の由来もこの寺名より。

聖徳太子により四天王寺の造営が始まったのは推古天皇元年(593年)とされます。蘇我馬子により建立された「飛鳥寺」と並び国内では最も古い寺院と言われますが、同じ聖徳太子が建立した「法隆寺」と異なり四天王寺は度々戦災・天災に遭いその度に建造物を焼失。戦国時代には織田信長の石山本願寺攻め、江戸時代には大阪冬の陣、そして近現代には太平洋戦争の空襲――。

そのため現在の境内に建つ建造物の多くは昭和以降に建てられたものが多くを占めますが(五重塔や聖徳太子をまつっている「聖霊院」など)、四天王寺本坊内にある「五智光院」「本坊方丈(湯屋方丈)」など江戸時代初期に江戸幕府二代目将軍・徳川秀忠によって再建された建造物は現存しており、国指定重要文化財となっています(そのほか六時堂、元三大師堂など)。また昭和以降に再建された建物も飛鳥時代の建築様式を忠実に再現しているとのこと。

境内の北側にある「四天王寺本坊庭園」では「極楽浄土の庭」「補陀落の庭」という2種類の庭園が見られます。

■補陀落の庭
江戸幕府第2代将軍・徳川秀忠により再興された「湯屋方丈」の前に広がる庭園。湯屋方丈の再建と共に作庭されたもので、現在の庭園は明治時代に改修されたもの。ゆるい築山と細い小川、そして石組と刈込みの組み合わせが非常に良い感じ。過去は前方部分には砂紋が描かれていた時期もあったようですが、自分が訪れた2回の時は描かれておらず…。
(また2018年に再訪した際は関西地方を大型台風が襲った直後で、その被害があったのか湯屋方丈にも足場が組まれていました。ただパッと見わからないだけ被害が少なかったと言えるのかな…)

■極楽浄土の庭
同じく江戸時代初期に作られ、明治時代初期に改修整備された庭園。その明治時代の整備時に浄土教における極楽浄土を願う「二河白道」(にがびゃくどう)の喩え話を表現した作庭がなされ、現在の庭園では湧水を利用した2つの池泉を「瑠璃光の池」と「極楽の池」、そして2つの小川を「水の河」「火の河」と称しています。
また夏前後には蓮池となる「極楽の池」の畔には国登録有形文化財の水色い洋風建築「八角亭」が建ちます。こちらは明治時代に開催された「内国勧業博覧会」で出品された中で唯一残るパビリオンで、後年に移築されたもの。

また「極楽浄土の庭」の回遊路には、松下幸之助によって寄贈された「和松庵」を始めとした複数の茶室建築や、遠方にはあべのハルカスを借景として眺めることも。「大阪 日本庭園」でググると万博公園の日本庭園が上位に来がちですが、大阪市近辺では「慶沢園」と並んでこちらが代表的な日本庭園かと思います!まさにという言葉がぴったり。

※おまけで。四天王寺の西大門付近にある「四天王寺高校」の校門付近では重森三玲が手掛けたという敷石が遠目で見られます。あくまでも学校敷地内なので近くで見学するには事前のお申込と許可が必要。

(2017年2月、2018年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

大阪市営地下鉄地下鉄谷町線 四天王寺前夕陽ヶ丘駅より徒歩6分
JR各線・地下鉄各線 天王寺駅より徒歩15分

〒543-0051 大阪府大阪市天王寺区四天王寺1丁目11-18 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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