旧朝倉家住宅(旧朝倉虎治郎邸庭園)

Kyu-Asakura House Garden, Shibuya-ku, Tokyo

関東大震災や戦災を逃れた、東京・代官山の貴重な大正時代の近代和風建築。苔と紅葉の美しい、近代の自然主義日本庭園も◎!

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旧朝倉家住宅(旧朝倉虎治郎邸庭園)について

「旧朝倉家住宅」(きゅうあさくらけじゅうたく)は東京・代官山の駅からすぐの場所にある大正時代に建築されたお屋敷。関東大震災や戦争の空襲による被害から幸運にも逃れ、その貴重さから国の重要文化財にも指定されています。そして崖線の地形を活かした回遊式庭園も。

2010年代、渋谷に勤務していた頃にちょくちょく訪れていたお気に入りスポット。2022年1月に約5年ぶりに訪れました。冬の写真だけど追加して紹介。

代官山の代表的な商業施設『ヒルサイドテラス』のすぐ裏、大都会に佇む近代和風建築「旧朝倉家住宅」。朝倉家は江戸時代中期、1700年頃(享保~元文年間)に武蔵国渋谷を定住して大地主となった家系で、ヒルサイドテラスも朝倉家当主と建築家・槇文彦により計画されたもの。

この邸宅は東京府議会議長や渋谷区議会議長も務めた当主・朝倉虎治郎の自邸として1919年(大正8年)に建立。その時代の“近代和風建築”といえば和洋折衷、朝倉家にも玄関入ってすぐに洋間こそあれ、どちらかと言えば外観含めてほぼ全て和風で統一。現在は絨毯敷きの主座敷(第1会議室)も当初は畳だったとか。

その背景は、伯爵家などの華族や財閥・実業家ではなかったから洋風のパーティーを開くこともなかった・そうしたタイプの賓客は居なかったから――だそう。
主屋2階の手すりや、入場門から見て奥にある“杉の間”は数寄屋風造りで欄間や床の間の意匠も凝ってて素敵なのだけれど、この辺も先述の華族・財閥系の邸宅と比べると主張は抑えめ、普段使いの空間といった趣き。

そして庭門から庭園へ(庭門も重要文化財に構成)。渋谷台地の斜面の地形や、モミジを中心とした雑木林を庭園に取り込んで、園路を進むと自然の中に石灯籠などの石造品が配された回遊式庭園となっています。

建築側から見ると春~秋には紅葉の姿や苔が美しい!また台地の上に建っているので、昔は室内から富士山を眺めることができたのだとか。

朝倉家に初めて来た2010年頃は、まだ庭園=池をぐるっとまわる、というイメージがあった。この渋谷~代官山~中目黒付近で言えば『菅刈公園』の日本庭園がとてもわかりやすい日本庭園像というか。

色んな庭園――特に京都では評価が高い“近代の日本庭園”を色々見たうえで久々に来てみると、池とかはないけど、めちゃくちゃ良い庭園だなあと。
苔むした中の飛び石の感じ、様々な地域の庭石を収集されている感じ、あと中庭含め何か所かコンクリートで固めた踏分石がある所。九州の国指定名勝庭園『旧蔵内氏庭園』の中でも書いたことだけど、それが最先端だった時代。

地域こそ全然違うけど、名古屋の『東山荘』が“台地の斜面を活かした近代の日本庭園”としてタイプは似ている。もっとも、東山荘も斜面の所は荒れてしまっている=そのエリアの庭園の価値や魅力が引き継がれずに現代に至っているのかなと思うので――旧朝倉家の庭園を通じて、近代の自然主義庭園の楽しみ方を伝える活動とかに期待!(他人任せ)

(2017年11月、2022年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

東急東横線 代官山駅より徒歩3分
東急東横線・東京メトロ日比谷線 中目黒駅より徒歩7分
JR山手線・湘南新宿ライン 恵比寿駅より徒歩10分

〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町29-20 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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