伏見稲荷大社 御茶屋・松の下屋

Fushimi-inari Shrine Ochaya Garden, Kyoto

“千本稲荷”が有名な京都を代表する神社は全国の“お稲荷さん”の総本社。通常非公開の“御茶屋・松の下屋”は京都市指定名勝の文化財庭園。

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伏見稲荷大社 御茶屋・松の下屋について

「伏見稲荷大社」(ふしみいなりたいしゃ)は“千本鳥居”が有名な京都を代表する神社・観光地の一つで、日本人のみならず多くの訪日外国人観光客が参拝に訪れます。日本全国に30,000社以上ある“お稲荷さん”(稲荷神社)の総本宮で、“日本三大稲荷”の一つ。
室町時代/桃山時代/江戸時代に建築された楼門・本殿・権殿・外拝殿・南北回廊・奥宮・白狐社・御茶屋の9棟が国指定重要文化財。また通常非公開の御茶屋とつらなる『伏見稲荷大社松の下屋』の庭園が京都市指定名勝です。

これまで何度か参拝に訪れていますが、2018年3月には『京の冬の旅』で、2022年4月に『京都非公開文化財特別公開』で通常非公開の『御茶屋・松の下屋』が特別公開。2022年の公開では写真撮影不可だったけど2018年は庭園のみ撮影可だったので、その時の写真も交えながら紹介。

平安京遷都以前、奈良時代初期の711年(和銅4年)の2月に京都東山三十六峰“稲荷山”に御祭神の稲荷大神が鎮座され創建、2011年には御鎮座1300年の祝祭なども行われました。

平安時代に『枕草子』『今昔物語』に記されるなど興隆するも、室町時代には応仁の乱で境内の建物は全焼。その後、1499年(明応8年)に再建された本殿が現代まで残る最も古い建築で、桃山時代に豊臣秀吉により楼門や奥宮、江戸時代には外拝殿・権殿・南北回廊などが再建されました。奥宮の更に奥へ進んだところに“千本稲荷”があります。千本と言うけど実際は山上までぐるっと約4kmの道のりに一万基の赤い鳥居が連なる。

通常非公開の『御茶屋・松の下屋』は楼門をくぐって右手側に進んだ場所にあります。国指定重要文化財の“御茶屋”は当初は『仙洞御所』(京都仙洞御所)内に建立された江戸時代初期の建築で、後水尾天皇に仕えていた伏見稲荷の祠官・羽倉延次が賜りこの地に移築されたもの。

御茶屋と並んで建つのが“松の下屋”。御茶屋を含めてこの敷地は伏見稲荷の社家・松本家の邸宅だった場所で、明治維新後に民間の所有となり、大正時代には料亭の開店が計画されました。そのために1917年(大正6年)に建てられた近代和風建築が“松の下屋”(京都市指定有形文化財)。
結果的に料亭は開かれず伏見稲荷大社の敷地に統合され現代へと至ります。内部が写真で紹介できないのは残念だけど、棟方志功の襖絵が超良かった(2022年の特別公開のキービジュアルにも)。

そんな御茶屋・松の下屋の庭園が京都市指定名勝の文化財庭園。稲荷山麓のゆるやかな斜面を活かした池泉回遊式庭園で、“表玄関の庭”、“御茶屋の北・東庭”、“松の下屋の西庭”“中庭”“園池・流れ”“土蔵廻りの庭”、茶室“瑞芳軒の露地庭”と幾つかのエリアで少しずつ雰囲気が変わる。

大正時代に当初は伏見稲荷の社務所の庭園に建てられた茶室“瑞芳軒”。1937年(昭和12年)の現在地の移築に関わったのが藪内紹智=茶道藪内流十一世家元・藪内透月斎竹窓。庭園の作庭にも関わっているのだろうし、もしかしたら“透月斎竹窓と関係性があり、京都の作庭にも関わっていた”神戸の庭師・巽武之助にも繋がってくるかもねぇ…。御茶屋沿いのジグザグの延段とかは特徴的。

2022年の京都非公開文化財特別公開では同じく伏見稲荷の境内にある国指定史跡『荷田春満旧宅』(かだのあずままろきゅうたく)も公開されました。江戸時代の国学者/歌人・荷田春満は伏見稲荷大社の社家の出身。神職への道には進まず、国学者として賀茂真淵本居宣長らと並び称されました。書院を囲む苔庭がめちゃくちゃきれいだったので、紹介できないのは残念…。次回の特別公開も待ち遠しい!

(2018年3月、2022年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR奈良線 稲荷駅より徒歩2分
京阪本線 伏見稲荷駅より徒歩3分
最寄りバス停は「稲荷大社」バス停 下車徒歩4分

〒612-0882 京都府京都市伏見区深草藪之内町68 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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